2025年2月19日(水)、1870年のフランス共和国建国から150年以上がたちました。これを記念して、ヴェルサイユ宮殿はこれまで未公開だった国会議場『サル・デュ・コングレ』(”salle du Congrès”)と議長の部屋『サル・デュ・プレジダン』(”salle du président”)を15日より初公開しています。1875年、宮殿の南側に作られたこのホール建設150周年を記念し、9月30日まで公開されます。
『太陽王』の宮殿内に潜む「共和国」
『太陽王』と呼ばれたルイ14世、その絶大な権力を象徴するヴェルサイユ宮殿の中に、その王政にとって代わった共和制を象徴する国会議場があるというのはいかにも皮肉なものです。
この17世紀の美の結晶にその200年後、建築家エドモン・ドゥ・ジョリー(Edmond de Joly)は宮殿の南翼棟に外観からはわからないように国会議場という異質なものを見事に融合させています。
宮殿で文化遺産主任学芸員を務めるフレデリック・ラカイユ(Frédéric Lacaille)氏によると「(ジョリーは)太い円柱など、まるで太陽王の建築プロジェクトをそのまま継続したかのように」「王政」を感じさせるホールを作り上げています。
フランス大統領14人はヴェルサイユで選出
フランス大統領は現在直接選挙によって選出されますが、そうなったのは1958年から現在まで続く第五共和制になってからの話です。
1962年の憲法改正で国民から直接選ばれる以前、つまり第三共和政(1870年~1940年)、第四共和政(1946年~1958年)の間の14人のフランス大統領は、実は国民議会と元老院の協議により、今回初公開される『サル・デュ・コングレ』で選出されていました。
いまでも国会議員や大統領が使用
700平米の半円形議場に2階層になったバルコニーのついたこの会議場は、現在、憲法改正にかかわる議論をする際に国民議会議員と元老院議員が集まる場所として使用されています。
また、大統領が両院の議員に向けた演説をする際もこの場所が利用されます。
ルイ16世の弟用だった場所に、上下院議長の部屋
今回初公開されたもう一つの部屋は、ルイ16世の弟プロヴァンス伯の部屋だった場所に作られたアパルトマンで、現在大統領が来訪する際、および上下院の議長の部屋として使用されています。
ネオクラシック様式とも呼ばれるルイ16世様式の建築として、金色などで突起部分が塗られた漆喰装飾が施された壁などが特徴的です。
ヴェルサイユ宮殿、まだまだある「秘密」の場所
今回、これまで国会議員など一部の人だけが入ることのできた場所が一般公開されたわけですが、館長クリストフ・ルリボー(Christophe Leribault)氏によると、宮殿内にはまだまだたくさんの未公開場所が隠されており、合わせて「数万平米」にも及ぶとのことです。そしてその中に、レプリカが一般公開されている著名な絵画などを含め、まだまだ秘蔵の芸術作品がたくさん眠っているようです。
館長はこれらの未公開部屋や作品を徐々に一般公開していくのが今後のチャレンジだと述べています。
再訪する楽しみが増えそうです。
特別公開:『サル・デュ・コングレ』
(週末:自由入場、平日:ガイド付き。詳しくはオフィシャルサイトにて)
ヴェルサイユ宮殿公式サイト
執筆:マダム・カトウ