2024年1月9日、昨日8日、ボルヌ首相(Elisabeth Borne)はエリゼ宮大統領官邸にてマクロン大統領に辞表を提出しました。後任選びが注目される中、大統領府側近の情報によると、昨年教育相に抜擢された34歳のガブリエル・アタル(Gabriel Attal)氏が最有力候補に上がっています。
ボルヌ首相、過半数なき20ヶ月
2022年4月のマクロン大統領再選後の国民議会選挙で、与党連合は国民議会で絶対的過半数を取れず、ボルヌ首相は就任以来議会で予算案、年金改革、移民法改正などの重要法案の審議において議会対応に苦慮していました。
リオネル・ジョスパン元首相(Lionel Jospin)の元顧問で、自らを「社会正義と機会均等」を原動力とする「左派の女性」と定義するボルヌ首相ですが、国会では右派との協力を余儀なくされました。
年金改革含む29回の強行採択
ボルヌ首相は法案の議会投票による可決ではなく、フランス憲法49条3項に定められる強行採択を多用しました。
マクロン大統領再選の公約で、国民に不人気の年金改革法案もその一つです。
野党は政府不信任案を提出しましたが、9票の僅差で可決を免れています。国民の間でも「議会をないがしろにした」と民主主義のあり方に疑問を持つ声が上がっていました。
移民法で内閣が内部分裂
昨年後半に行われた移民法改正法案は、当初可決に至らなかったものの、最終的には右派保守共和党、および極右の支持を受け可決しています。
現行の移民法を厳格化する改革は、与党連合内でも意見が分かれ、保健相オレリアン・ルソー(Aurélien Rousseau)が辞任するなど、ボルヌ内閣はさらに弱体化しました。
一連の不人気な改革でマクロン大統領の支持率が下がる中、内閣改造が近いとの見方が広がっており、それに先立ちボルヌ首相は辞職しました。
後任最有力候補はフランスで最も人気の大臣、アタル教育相
フランス時間9日に発表されると見られる後任ですが、現教育相のガブリエル・アタル氏が最有力候補との見方が広がっています。
野心家の同氏は、若干23歳でオランド政権時代のトゥレーヌ保健相(Marisol Touraine)のオフィスに入り、2016年、マクロン率いる共和国前進党に入党。その翌年、オー=ド=セーヌ県(Hauts-de-Seine)の国民議会議員に選出されます。
2018年には青年担当政務次官として、わずか29歳で入閣、
マクロン派の「神童」と呼ばれ国民教育・青少年大臣付副大臣、政府報道官などをへて昨年保健大臣に就任しています。
大臣就任以来、アタル氏の人気は急上昇、現在フランスで最も人気のある大臣となっています。
一部メディアでは、2027年大統領選での有力な候補になるとも騒がれていますが、その前に今最も大変な時期にある内閣を統率する首相職を担うかもしれません。
執筆:マダム・カトウ