前回から、街なかで金品を要求された場合の対処方法についてお話ししています。前回の「電車内で紙を配られる・親子連れで周ってくる」に続いてよく見られるのが、「電車内で大きな声で話し始める」です。
仕事や援助を求めてくる
電車内で突然大きな声で、演説のように話し始める人がいます。自分の思想を語るだけの人もいれば、物乞いする人、求職をする人などさまざまです。
「うるさくしてごめんなさい。私は今住む場所がなく駅の構内で寝ています。どうか私に今晩ホテルで寝るためのお金・食べもの・ティケレストラン、なんでも結構ですから恵んでください。私は働くことが出来ます。ファム ドゥ メナージュ(femme de ménage 家政婦、お手伝いさん)を探している方は、ぜひ私に仕事をください。ありがとうございます。よい一日を」
体に重度の障害を持っている方が、「私は障害のために仕事に就くことが出来ません。しかし出来れば自立したいと思っています。私に出来る仕事をください。そして援助も必要です。どうか助けてください」と一生懸命訴えている場面にも出会いました。
彼らが訴える理由はさまざまです。なんらかの事情で仕事が出来ず、やむを得ず不憫な暮らしをしている人もいます。
ガイドや新聞を販売する人も
家を持たない人のことを「SDF(Sans Domiciles Fixes ホームレス)」と言います。しかしこのように職を求めている人のことはSDFというのを避け、「précaire ( 不安定な)」や「en précarité (不安定な様子)」と表現します。
その「Précaire」の中で、ときどき首からカードをぶら下げて車内で「レストランガイド」や新聞などを売って回る人がいます。彼らも定職に就けなかったり住む家がなかったりする人たちですが、RATP(パリ交通公団)の許可を得て販売しています。その売り上げが彼らにとって貴重な収入源となるのです。
逆に言えば、許可を得た人以外は全て違反行為になります。もしコントロールが来た場合はすぐに下車させられ、無賃乗車の場合は罰金です。しかし支払い能力がないことを職員さんも分っているので、ほとんどは口頭注意で終わります。
渡すかどうかは自分の意思で
現地の人はどう対応しているのでしょうか? RERのチケットを上げる人もいれば、雑誌を購入する人、1€や50サンチームをあげる人などさまざまです。彼らの訴えが心に響けば、手元にある小銭をすっと渡します。渡すか渡さないかは自分の意思で判断しています。
もし渡す必要がないと思えば首を横にふるか、「désolé..(ごめんなさい)」と一言添えます。僕は彼らを全く無視することがどうしても出来ないので、せめて目を見てdésoléと言うようにしています。
次回はお馴染み「電車内で急にコンサートが始まった」についてお話します。
執筆 Daisuke