フランスの大学院進学に必須の基準となる「DALF C1」(Diplôme approfondi de langue française)は、フランス政府認定の公式資格です。
(DELF/DALFの概要については、こちらの過去記事「フランス語検定試験DELF/DALFとは?(1)」「フランス語検定試験DELF/DALFとは?(2)」 をご覧ください。)
ハイレベルな「DALF C1」受験を通じて身につく3つの能力
C1の試験はフランスの大学に入学するための資格であり、出題される内容はとても専門的です。この試験を受けることによってどのような力がつくのか、過去問の内容に基づき3つのポイントに絞ってお伝えします。
メリット1:長いテキストのリスニング能力がつく
C1のリスニング(Compréhension de l’oral)では、8分ほどの長いテキストを理解し、設問に答える能力が試されます。
過去問のトランスクリプション(=読み上げ文を書き起こしたもの)を参照すると、250~300語ほどのラジオインタビューが材料であり、分量はB2の約2倍です。スピードはもちろん、生のラジオ番組と同じです。
そして、一つのインタビューではあるものの、細かく見ると5つほどの小テーマに分かれています。話している内容の移り変わりをしっかりと聞き分けながら、辛抱強く最後まで聞く力が必要です。
普段からフランス語のニュース等を聞いている方でも、8分という、まとまった長さのテキストを聞く機会は少ないのではないでしょうか。C1の試験にチャレンジすることで、まとまりのあるテキストを深く理解する力を伸ばすことができます。
メリット2:専門的なテキストの読解力がつく
C1の筆記試験のうち、読解(Compréhension des écrits)は本格的な文学作品や、新聞記事が問題として出されます。分量は1500~2000語で、A4で2ページほどの文章です。
過去問には、モーパッサン(Henri René Albert Guy de Maupassant,1850-1893)の作品や、新聞「Le Monde」の記事が使われています。これらの文章は、体言止めが多い、時制が分かりにくい、慣用表現が多い、などの特徴があります。ですから、C1に合格するために何度も似たような文章を読んで練習を積んでおく必要があります。
このように書くと、とっつきにくい印象を持たれるかもしれません。しかし、C1の試験をきっかけに上記のような文章を読めるようになれば、文学的文章や、「Le Monde」以外の新聞を読む力がつきます。フランス語の文章を読むことの、新たな楽しみを見つけることができます。
メリット3:自分に合った語彙力がつく
C1の試験の関門、作文(Production écrite)とプレゼンテーション(Production orale)においては、受験生の専門によってテーマを選ぶことができます。一つは、「文芸・人文科学(Lettres et Sciences humaines)」、もう一つは「科学(Sciences)」です。
作文では、全部で1000語程度のテキストが2~3本出題され、それらの要約と、テキストの内容を基にした作文を書かなければなりません。また、プレゼンテーションでは、1000語程度のテキストから一つを選び、内容についてのプレゼンテーションを作成して試験官とディスカッションを行います。
これらの試験では、リスニングや読解と違い、自分の知っている語彙でテキストの内容を表現し直す能力が問われます。そのため、選択した分野の語彙力が必要です。
C1の試験の対策を通じて自分の関心に近い語彙力をつけることができるので、日常の他愛ないテーマだけでなく、専門的な会話など、フランス人とのコミュニケーションの幅を広げることができます。
思い立ったが吉日!「DALF C1」の申し込みへ
「フランス語上級者の登竜門」であるC1の試験には、毎回、多くの受験生が挑みます。会場の定員も限られているため、受験を決めたら、なるべく早い時期に申し込みましょう。
筆者も、高いレベルだから受験生も少ないだろう、と申し込みを怠っていました。しかし、東京会場や横浜会場など首都圏の会場は、瞬く間に席が埋まってしまいます。申し込みの際は気を付けましょう。
もし、留学先に証明書を提出するなどの事情がある場合は、申し込み(inscription)開始時期をしっかりチェックしておくことをお勧めします。
まとめ
ハイレベルなC1の試験は、試験対策をする過程でリスニング能力・読解力・語彙力といった様々なスキルを伸ばすことができます。
この記事が、みなさんにとってフランス語学習の新たな第一歩を踏み出すきっかけになれたとしたら、幸いです。
執筆あお