フランスのテレビやニュースで、自分の国を「フランス」と言わずに「レグザゴヌ(L’Hexagone:意味は六角形)」と呼ぶことがあります。私たちが地図で目にするフランスの形と何か関係があるのでしょうか?今回は、フランスの地図シリーズ前編として、フランスの形や各地域の特徴についてレポートします。
なぜフランス人は自国を「六角形」と呼ぶ?
フランスの形は、過去には五角形や八角形を主張していた地理学者もいたようですが、現在では6つの頂点をむすぶ六角形とみなすことが主流です。簡単に6つの頂点を紹介しますね。参照した地図の上の頂点から時計回りに見ていきましょう。
1.北:ダンケルク 黄緑(HAUTS-DE-FRANCE)
2.北東:ライン川沿いの国境 水色(GRAND-EST)
3.南東:ニース近郊 薄紫(PROVENCE-ALPES-CÔTE-D’AZUR)
4.南:ピレネー山脈 ピンク(OCCITANIE)
5.南西:ビスケー湾の端 オレンジ(NOUVELLE-AQUITAINE)
6.北西:ブルターニュの先端 ベージュ(BRETAGNE)
この6つの頂点を結ぶと調和のとれた六角形になります。ヨーロッパ大陸にあるフランス本土(コルシカ島を含む)を指しており、六角形という表現をメディアなどでよく耳にします。
19世紀後半頃から「フランスは六角形である」という認識が徐々に広がり始めます。20世紀前半、特に1930年代以降には教科書で一般的に使われ始めるようになり、その後フランス本土と海外領土を区別する意味でも使用される頻度が増えて次第に定着し、現在でも使用され続けています。
六角形のそれぞれの地域に見える隣国の影響
フランスの6つの頂点、またそれらを結ぶそれぞれの地域では、隣接する国や海からの影響を受けた特色のある文化を見ることができます。簡単にどんな特徴があるかみてみましょう。
1. 北の頂点 × ベルギー・フランドル文化
赤レンガの建物や鐘楼、そしてビール文化。現在のフランス北部、ベルギー西部、オランダ南西部にまたがるかつてフランドルと呼ばれていた地域で、フランドル文化が色濃く残る、ベルギーやオランダに近い「北の空気」が漂います。
2. 北東の頂点 × ドイツ文化
アルザス地方に見られる木組みの家や、キャベツの酢漬け(シュークルート)。歴史の中で何度も国境がフランスとドイツで揺れ動いたこの地には、ドイツ的な規律と美意識が息づいています。ドイツ語系のアルザス語という言葉も話されています。
3. 南東の頂点 × イタリア文化
ニースやマントンの街並みは、パステルカラーの壁が並ぶイタリアそのもの。食文化もオリーブオイルやパスタが主役で、陽気な地中海気質が混じり合います。
4. 南の頂点 × 山岳文化
ピレネー山脈に守られているこの地は、険しい岩壁が多いためお隣のスペインの影響はあまりうけていません。羊飼いたちが受け継いできたチーズ作りの知恵や、厳しい冬を共に乗り越えるための強い共同体意識が、今も色濃く残っています。
5.南西の頂点 × スペイン・バスク文化
独自の言語と誇りを持つバスク。赤い屋根の家々や、情熱的なお祭りは、ピレネーの向こう側(スペイン)と深くつながっています。
6.北西の頂点(ブルターニュの端)× ケルト文化
他の5地点とは違い、ここは「海」との境界。かつてイギリスやアイルランドから渡ってきたケルト人の文化が色濃く、クレープやシードル、神秘的な神話が今も大切にされています。ケルト語派のブルトン語という言葉がありますが、現在ではUNESCOのレッドブックによって、著しい危機に瀕している言語と定義されています。
全てはここから始まる フランスのゼロポイント
多様な文化が混じりあう六角形をまとめるフランスという国家の中心はパリです。
ノートルダム大聖堂の正面広場の石畳に、ひっそりと埋め込まれた真鍮の円盤。それが「Point Zéro des routes de France(フランス道路元標)」です。六角形の国土に張り巡らされたすべての国道は、物理的にも象徴的にも、この一点から始まります。
かつて王権の中心であったパリ、そして信仰の中心であったノートルダムこそが、フランスの中心であると考えられたからです。
18世紀、ルイ15世の時代に「すべての道の起点」として正式に定められました。首都から各都市までのすべての距離を測る基準となっています。

2019年のノートルダム大聖堂の火災に伴いこの円盤は破損してしまい、修復の際に熟練の職人たちによって同じ姿に作りなおされました。火災で役目を終えた初代の円盤は、カルナヴァレ博物館(パリ歴史博物館)に現在は収蔵されています。
この円盤には幸運の言い伝えがあるのはご存じでしょうか?
「この円盤に足を乗せた者は、いつか必ずパリに戻ってくることができる」
ノートルダム大聖堂は多くの人通りがありますが、行く機会がありましたら是非この円盤にそっと足を載せてみてくださいね。
まとめ
フランス人が愛着を込めて呼ぶ六角形から多様な文化を感じることができます。パリのゼロポイントからどの地方に足を運びたくなりましたか?
次回は、フランスの地図の中に存在する「空虚の対角線」、そして作家シルヴァン・テッソンの物語へと歩みを進めます。どうぞお楽しみに。
執筆 YUKO












