「フランスに予算が必要」ルコルニュ首相、予算を強行採択

2026.01.30

仏2026年予算、強行採択へ

2026年1月30日(金)、4カ月の審議の末、議決を待つのみとなったフランスの本年度予算案について、ルコルニュ首相は憲法49条3項に基づき、31日の国民議会(Assemblée nationale)で強行採択することが予想されます。採択されれば、バイル前政権から遅延していた今年の予算がようやく成立することになります。

 

2026年度予算、国民議会は強行採択へ

今年度予算の議決に当たり、極右RN党、極左LFI党により提出された内閣不信案が否決されたことを受け、予算案は上院(セナ:Sénat)に持ち込まれました。

中道右派が多数を占めるセナは、昨年秋から約4カ月間にわたった予算審議にこれ以上時間をかけることを嫌疑し、法案の「再読を即時に否決」しました。

これにより、予算案が国民議会にて最終的に採択される道が開かれました。

2026年財政法案は、明日予定されている最終読会後、早ければ即日、ルコルニュ首相がフランス憲法49条3項(49.3)に基づき、強行採択(政府が採決なしで法案を採択する手続き)を発動する見通しです。

野党のうち極左LFI党と極右RN党が再び提出する内閣不信任案は否決される見通しで、遅くとも来週頭には予算が成立することになります。

 

予算なきフランスの弊害、経済に打撃

予算が成立しないと行政がシャットダウンするアメリカと違い、フランスは前年度予算が暫定予算として継続されます。

しかしながら、企業や自治体、非営利団体は、今年補助金がいくらでるのか?そもそも補助金自体でるのかわからず、税率も据え置きなのかどうかもわかりません。

公共サービス、自治体や学校、警察などの新規のプロジェクトや新規採用はすべて保留となっています。

民間企業も税率の改正や補助金などの政策が決まらないことから、新規の投資や採用を控える傾向がみうけられます。

軍事産業「軍備増強」宣言、なのに生産量あげられず

マクロン大統領はロシアを主要な安全保障上の脅威と位置づけ、欧州及びフランス国内の防衛力強化と軍備増強を訴え、国内の武器メーカーに増産を訴えています。

ところが予算が決まらないため、政府からの新規受注や今年度予算で約束された70憶ユーロ(約1兆2,866億円/1ユーロ=約184円)の貸付金が保留になっています。

企業側は「増産」と言われたものの、必要な先行投資の新規採用はストップと「待機」状態が続いています。

国民にとっては、今年の所得税の税率が不明なこともあり、出費を抑える傾向がより強まっています。とくに暫定予算では所得税課税額にインフレ率を加味しないため、昨年まで非課税だった約20万人が今年課税対象になってしまいます。

 

社会党の協力を得るため妥協、「ないよりマシ」の予算

財政赤字の改善を目指した2026年度予算案をめぐり、フランスでは昨年から政治的混乱がつづいていました。バイル前政権が提出した財政再建や歳出削減を中心とした予算案は、野党からの強い反発に直面し、同政権は国民議会で信任を得られず総辞職に追い込まれました。

その後、首相交代劇による政治的混迷が続き、予算審議は中断したままとなっていましたが、最終的にルコルニュ首相により昨年10月から審議が進められていました。

ルコルニュ首相になっても、国民議会で絶対過半数を持たない現政権は常に内閣不信任の可決リスクを背負っています。

そのため首相は、野党左派で中道寄りの社会党に接近し、国の安定を目指すという部分では意見が一致する同党の協力、つまり内閣不信任案を提出しない、支援しないという約束を取り付けるかわりに、いくつかの法案に対し譲歩、妥協を余儀なくされています。

社会保障、減額どころか増額

まず、失業者や生活保護者が再就職した場合に与えられる「就業手当」について、当初の案にあった減額ではなくむしろ増額と、低所得層の支援が強化されることになりました。生活保護者がクリスマス前に受け取る特別手当も、子供がいる家庭のみ限定する原案が撤回されました。

また、年金受給者の税優遇措置であった10%の控除を変更する改革案も撤回され、今年度も維持されることになりました。

社会保障給付(失業手当、家族手当、低所得者支援)も再評価されることが予算案にもりこまれるなど、左派の要求に政府が譲歩した形となります。

最終的に予算額は「増額」、遠のく財政再建

今年の国家予算は5,010億ユーロ(約92兆768億円)と昨年を上回る額になります。政府は3,100億ユーロ(約56兆9955億円)の借り入れで財政赤字の補填を行うことになります。

過去の事例を踏まえると、歳出が拡大した場合、将来的に税収増や歳出削減で帳尻を合わせる動きがでてくる可能性があります。

補助金カット、中間層、富裕層、企業への負担増など、今後の動向が注目されます。

執筆:マダム・カトウ

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