フランス どうなる?過半数割れのマクロン政権 見通しの立たない5年間へ

2022.06.21

フランス どうなる?過半数割れのマクロン政権 見通しの立たない5年間へ

6月21日(火)、19日(日)に行われたフランス国民議会選挙の決選投票の結果、不服従のフランス党(France Insoumise)のメランション氏(Jean-Luc Mélenchon)率いる極左連盟(Nupes)と、ルペン氏(Marine Le Pen)率いる極右国民連合党(Rassemblement National : RN)が過去最高の議席数を獲得、マクロン大統領率いる与党アンサンブル!(Ensemble !)が過半数割れに陥るという異例の事態となりました。連立の選択肢が限られる中、フランス政治の混乱を回避するため、マクロン大統領は本日より野党の代表との面談を開始しています。

 

フランス国民、マクロン政権に「ノン」を突きつけ

19日に行われたフランス国民議会選挙の決選投票にて、マクロン氏の与党アンサンブル!は245議席を獲得しましたが、法案の通過に必要な過半数289席(全577議席)を大きく下回る結果となりました。

これは、マクロン氏が大統領に初就任した2017年の350議席と比べ、実に105席も少なくなっています。

内閣の形成も難航、ボルヌ首相は続投

今年の大統領選後、5月に任命したばかりの新内閣閣僚のうち、ブルギニョン保健相(Brigitte Bourguignon)、モンシャラン環境相(Amélie de Montchalin)、ベナン海洋担当国務長官(Justine Benin)の3名が今回の選挙で落選、さらに一部の閣僚ポストも空白のままになっています。

ボルヌ首相はフランスの伝統に従い辞表を提出しましたが、マクロン大統領は「政府は任務を遂行し続けるように」と辞表を却下しました。

政府内では「首相を変えても過半数が取れるわけではないから」とも言われています。

 

伝統的右派、共和党との連立の可能性は?

今回の国民議会選の結果、与党アンサンブル!の次に議席数の多い野党が、極右、極左という異例の事態になっています。

議席獲得数133席で野党一の勢力となった極左連合”Nupes”、及び過去最高の89議席を獲得し単独で野党第一党の地位に昇格した極右が法案の可決を妨げることは必須であることから、議会で過半数を獲得するために与党アンサンブル!と他党との連立が焦点になっています。

伝統的左派でかつてマクロン氏が所属していた社会党(Partie Socialiste : PS)は、弱体のあまり存続の危機が騒がれ、今回の選挙でマクロン政権打倒を狙う極左の「不服従のフランス党」が結成した極左連盟に加盟してしまいました。

そのためサルコジ大統領以来政権を取れず、今回の議会選では64議席と第四党に転落した伝統的右派の共和党(Les Républicains)との連立しか選択肢はない、とメディアでは囁かれています。

連立に賛否両論真っ二つの共和党

連立に関し共和党内では賛否両論分かれています。

昨日20日、元共和党員で親マクロン派、首相候補に名前が上がったと言われるカトリーヌ・ヴォートラン氏(Catherine Vautrin)は「フランスの安定のために、共和党はマクロン政権と連立すべきだ」と、出演したラジオ番組で発言しました。

これに対し、クリスチャン・ジャコブ(Christian Jacob)共和党党首は、本日声明を発表し「共和党は連立せず、野党として存続する」、「我が党を信じて投票した国民は、我々がマクロン政府に迎合するために投票したわけではない」と、選挙前からの方針である「連立拒否」の姿勢を固持しています。

 

今後5年間「見通しの立たない」フランスの政治リスク

議会研究家のオリヴィエ・ローセンベルグ氏(Olivier Rozenberg)は、当然「政治の安定には、公約に共通点のある政党との連立が理想」としつつも、現時点で共和党との連立は「期待できない」と述べています。

共和党が連立に前向きになるためには、公約への妥協と粘り強い交渉が必要になりますが、氏は「(5年間野党との交渉なしで政権を維持してきた)マクロン大統領はこういった交渉に不慣れ」と指摘しています。

またフランスの選挙の仕組み、特に次回大統領選での決選投票を視野に入れたときに「連立」が不都合に働くことも、野党を「連立に後ろ向き」にさせる要因となっています。

今の共和党は「唯一の連立可能な政党」という立場を利用して、与党の提出する法案通過を左右するだけでなく、マクロン政権存続の鍵も握っています。

 

極左連盟、マクロン政権弱体化に向け「内閣不信任議決案」提出か?

メランション氏率いる不服従のフランス党は、極左連盟として7月5日の国民議会の首相演説の際「内閣不信任議決案を提出する」と発表しています。

これについてローゼンベルグ氏は「極左連盟の多くの議員だけでなく、極右国民連合の議員の多くも内閣不信任案に投票するだろう」と予想します。

内閣不信任が議決されると、内閣再編だけでなく議会解散のリスクもあり、そうなると政治的混乱を招きます。

議会解散リスク、政治的混乱、改革進まず

共和党の中には、決選投票で僅差で当選した議員も多数おり、彼らはやっと手に入れた自らの議席を手放したくないため内閣不信任案に賛成投票しない可能性もあります。

与党が過半数を取れないことで、「統治不能状態に陥るとは限らない」というローゼンベルグ氏は、内閣不信任案議決が通らなくても国民に不人気な改革法案は通過せず、その他の法案の決議にも毎回野党との交渉に時間がかかるため、今後フランスは「何も前に進まない状態」になることが危惧されると述べています。

執筆:マダム・カトウ

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