2025年12月26日（金）、フランス国民議会（Assemblée nationale）は、来年度予算の可決には至らず、クリスマス休暇に突入しています。可決の見込みがないと判断した23日、臨時予算として今年の予算が暫定として引き継がれることが決まっています。最低賃金やパリの公共交通機関など、来年１月１日から変更になります。
最低賃金が1.18％上昇、インフレ率が安定
最低賃金（Smic）は、来年１月より月額総支給額で1,823,03ユーロ（約335,440円／１ユーロ＝184円）になります。社会保障費用を差し引いた、税引き前の手取りは1,443,11ユーロ（約265,530円）です。
これにより、現在の1 ,801,80ユーロ（約331,530円）から、21,23ユーロ（約3,900円）増えます。
今年の賃上げ率は1.18％と低く抑えられています。これは、インフレ率の安定化に加え、前回、特に低所得者支援目的として、インフレ上昇率を超える２％の賃上げが、２ヵ月前倒しした24年11月に実施されたためです。
同様に、年金支給額の上昇も0.9％に抑えられています。
アメリカと違い、フランスでは翌年の予算が成立しない場合でも、公務員の給与など含め、国の運営を行うための最低限の支出については、前年度予算が引き継がれます。
しかしながら、毎年国会での採択が必要な補助金などに関しては凍結されます。
省エネ住宅補助停止、温暖化対策が後退
来年度予算が採択されなかったことを受け、政府は住宅の断熱など、エネルギー効率を上げる改修工事費用への補助金（MaPrimeRénov’）の受付を来年１月１日から停止すると発表しました。
温暖化対策の一環として、既存の一軒家、アパートなどのオーナー向けに開設されたこの補助金ですが、昨年及び猛暑のこの夏に申請数が増えすぎたことから、受付が中止され９月末に再開されたばかりでした。
少子化対策、出産休暇の延長
社会保障局の資金調達法（loi de financement de la Sécurité sociale）により新設された出生休暇（congé de naissance）は、現在の産休（congé de maternité、congé de paternité）に加え、両親がそれぞれ１～２ヵ月の休暇を取得できるものです。
少子化対策として新たに導入されるこの休暇には、給与の一部補償もあります。
補償額は対象者に「かなり有利」であると発表されているものの、具体的な内容は来年１月以降に政令で発表されます。
適用されるのは、来年１月１日以降に生まれた赤ちゃんからになります。
郵便代7.4％値上げ、続く郵便需要の減少
ラ・ポスト（La Poste）、フランス郵便は、需要が減り続ける郵便配達事業の存続を理由に、普通封書郵便の切手代を現在の1.39ユーロ（約256円）から1.52ユ―ロ（約280円）に値上げすると発表しています。
「コリッシモ（Colissimo）」と呼ばれる、一般向け小包の郵送料もフランス国内および国際便とも平均3.4％値上げされます。
2025年、フランスの家庭が郵便に費やした金額の平均は28ユーロ（約5,150円）、ラ・ポストの試算によると需要減はさらに進み、来年度はさらに６％下がると予測しています。
パリの地下鉄など、またまた値上げ
「パス・ナヴィゴ（Pass Navigo）」と呼ばれる、パリ及びイル＝ド＝フランスのメトロや郊外列車、バスなどの公共交通起案で利用できる定期代が、２ユーロ（約370円）値上がりして90.80ユーロ（約16,700円）になります。
運営会社イル＝ド＝フランス・モビリテ（Île-de-France Mobilités）によると、毎月の定期を購入する人の10人に９人は、勤務する企業から交通費の半額支給を受けており、実際は45.40ユーロ（約8,350円）のみ自腹で払っています。
毎年グングン値上がりするこの定期代、実はパリ市、イル＝ド＝フランス圏内の自治体など、様々な補助金の上に成り立っています。
これらの補助金が一切なかった場合、月々の定期代は実に280.07ユーロ（約51,530円）となります。
執筆：マダム・カトウ
