
2025年12月2日(火)、ルーブル美術館、ヴェルサイユ宮殿など5つの美術館や歴史的建造物は、来年1月14日より二重価格を導入します。これにより日本やアメリカ、中国など、EU圏及びEEE圏在住者を除く外国人観光客への料金が約5割増しの大幅値上げになります。これに対し、ルーブル美術館などの職員組合などが反発しています。
2026年1月14日から、ルーブル美術館は10ユーロ値上げ
ルーブル美術館(musée du Louvre)は、EU及び欧州経済領域在住者とそれ以外の国からの在住者を区別する「二重価格」を導入する、と発表しました。
これにより、来年1月14日より、現行の入場料22ユーロ(約3,990円/1ユーロ=約181円)が32ユーロ(約5,800円)に値上げされます。
値上げ額は10ユーロ(約1800円)、実に47%アップとなります。
EU加盟国、欧州経済領域(アイスランド、ノルウェー、リヒテンシュタイン)、およびスイス在住者は値上げの対象外となり、来年の入場料は据え置きとなります。
現在、18歳未満は在住国に関係なく無料で、EU及びEEE圏加盟国在住者なら26歳未満が無料です。いずれもパスポートやIDカードの提示が必要です。
フランス人の場合、失業者も無料で入場することができます。
ちなみに2024年の入場者の41%は26歳未満、無料入場者の割合は全体の28%でした。
ルーブル入場者の77%が外国人、1位はアメリカ
ルーブル美術館が発表した2024年の活動報告書によると、昨年の訪問者総数は870万人、そのうちの69%は外国人でした。
もっとも多かったのはアメリカ人で、全体の13%を占め、中国人は6%でした。
続いて、欧州の近隣国からイタリア、イギリス、ドイツがそれぞれ5%、スペインが4%となっています。値上げは当然ブレグジットしたイギリス在住者にも適用されます。
ルーブル美術館は、今回の二重価格の導入で、1,500万ユーロ(約27憶1600万円)から2,000万ユーロ(約36憶2,000万円)の収入増を見込んでいます。
10月19日の「世紀の宝石強盗」被害で露呈された、安全システムや老朽化といった構造的な問題を解消するため、今後行われる修復工事にかかる膨大な費用の一部に充てられます。
ヴェルサイユ宮殿も二重価格へ、来年から入場料最高で35ユーロに
ヴェルサイユ宮殿(Château de Versailles) も来年1月14日より大幅値上げを予定しています。
ハイシーズン(4月1日~10月30日)は現行の32ユーロ(約5,800円)から35ユーロ(約6,400円)、それ以外のローシーズン(11月1日~3月31日)は25ユーロ(約4,500円)となります。
ヴェルサイユもEU及びEEE圏在住者の料金は32ユーロのまま据え置かれます。
二重価格の料金差はわずか3ユーロ(約543円)ですが、近場から来るヨーロッパ圏の入場者向けには、22ユーロ(約4,000円)の閑散日割引の設定が予定されています。
グループ料金は25ユーロで、ハイシーズンは団体での入場がお得になっています。
ヴェルサイユの二重価格は正式には決定されていませんが、確定すれば940万ユーロ(約17億円)もの収入増につながります。
シャンボール城、サント・シャペル教会、オペラ座、今後多数が追従か?
ロワール地方の風光明媚なシャンボール城(Château de Chambord)、パリ市内にあるサント・シャペル礼拝堂(Sainte-Chapelle)、パリオペラ座(Opéra de Paris)(観劇チケットではなく、館内のビジット料金)などが来年から二重価格を導入することが予定されています。
ラシダ・ダティ(Rachida Dati)文化相は、「今後、全国の文化遺産や美術館、博物館への導入が行われるだろう」と述べています。
ちなみに、オルセー美術館(musée d’Orsay)は今のところ検討していないと発表しています。
労組側、「不平等」と一斉に批判、入場時間が長くなる?
二重価格の導入に、ルーブル美術館労組の代表、クリスチャン・ガラーニ(Christian Galani)氏は、「我々は欧州経済領域の国民とそれ以外の国からの入場者を区別しないのは差別だと思う傾向にあるが、この考え方は、公共サービスへのアクセスにおける不平等を生む」と嘆いています。
他の組合も、ルーブル美術館の「普遍性」を考えると、その所蔵品への「平等なアクセス」を維持すべきだとし、この措置を一斉に批判しました。
そもそもルーブルの所蔵品には、フランスやヨーロッパ圏以外の国の「遺産」や「重要文化財」が多数含まれています。それらの美術品が作られた国の人々に、より多くの入場料を払わせることに違和感を感じるという意見もあります。
さらに、すでに時間を要する館内への入場の際に、どのようにパスポートや居住地の確認を行うのかなど、今後のオーガナイズについての詳細は発表されておらず、組合側は懸念を表明しています。
料金は5割増し、待ち時間はさらに長くなるのか?フランスの観光名所が次々に値上げするのか?など、今後の動向が注目されます。
執筆:マダム・カトウ













