2024年12月17日(火)、フランス人の主食であるパンに含まれる塩分が、2015年対比で25%も減少しました。塩分の健康への害は世界的に知られており、フランス健康省も生活習慣病対策の一つに減塩を目標に掲げ、パン業界と共に取り組み成果を上げています。
パンに含まれる塩、10年で30%減に、目標達成まであとわずか
焼き立てのバゲット、その香ばしさについつい家に持って帰る前にかじってしまいます。
フランスのパンは「味がある」ので何もつけなくてもおいしいと感じますが、実はパン作りにはたくさんの塩が使われており、健康への影響が指摘されているのです。
フランス健康省及び農業省の発表によると、現在フランスで一般的に出回るパンに含まれる塩分は2015年比で25%まで減少しました。
2015年、WHO世界健康機関(OMS)は塩分摂り過ぎによる健康への害を減らすため、全世界で2025年に30%減という目標を定めました。
これを受けフランス政府は2022年3月、パン業界(パン屋、パン職人や卸業者)と協定を結び、同様に2025年までに30%の減塩目標を掲げました。
期限の来年を控え、目標達成まであと5%という大きな成果を上げたのは、パン業界が協定に従い努力してきたおかげと言えます。
食パンやシリアルパンに成果も普及に格差
政府系機関でフードウォッチを行う食品監察局(Observatoire de l’alimentation:Obali)の調査によると、全粒粉パンコンプレ(pain complet)やシリアルパン(pain aux céréales)に含まれる塩分は、2009年比で18%減少しました。
確かに一般に販売されているこれらのパンのうち80%は塩分減少し、パンドゥミ(pain de mie)と呼ばれる食パンの98%についても同様の成果が上がっています。
しかしながら、減塩は地方や販売ルートにより偏りがあることも明らかになっています。
減塩で味の変化、顧客が納得するか?
パンと言っても生産、販売ルートは多様で、まずパン職人が店でパンを作る町のパン屋さん、工場で生産しスーパーなどに卸すパン業者もあれば、学校給食や社食などの団体食を専門とする業者などもあります。さらに家で消費者が自分で焼く冷凍パンの生産業者などもあり、減塩の推進にはこれらの業界全体の協力が必要になるのです。
塩分の調整を自分で決めることができる町のパン屋さんと違い、卸業者は顧客である大手スーパーチェーン等に対し、味や成分の変更を了承してもらわなくてはなりません。
目標達成には、協定を結んだパン屋組合や卸業者組合など業界関係者が、減塩が進んでいない地方や特定の販売網への対策を強化しなくてはなりません。
食パンに関しては、2025年には100グラム当たりの塩分を1.1グラムまでに抑えるためさらなる努力が必要です。
フランス人の食事「塩分取りすぎ」、減塩にパンがターゲット
世界健康機関のターゲットは食事全体からの塩分摂取量を減らすことで、なにもパンに特定しているわけではありません。
フランスも2019年に健康省が全国食品栄養キャンペーンを開始し、食事が原因となる生活習慣病、心臓病や脳溢血などのリスクを減らすための対策を講じてきました。
減塩はその一環にすぎませんが、同省がパンの減塩に重きをおいている理由は、フランス人の食事の中でパンからの塩分摂取量が大きな割合を占めているからです。
とはいえ「減塩=味気ない」と言われてしまえば元も子もありません。フランスのパン屋さんはさらなる努力が強いられそうです。
執筆:マダム・カトウ