フランスワイン コルク栓よりスクリューキャップが流行りは本当か

2024.10.01

vin2024年10月1日(火)、ワインの美味しい季節を迎え、フランス各地でワイン市が開催されたり、多くのスーパーではワイン特設コーナーがつくられています。ワインにはコルクの栓がされているのが当たり前とおもいきや、金属のスクリューキャップ製が年々増えていますが、浸透するのでしょうか?

 

オーストラリアでは「コルク栓の開け方がわからない」

世界各地にワインを輸出する、ラングドック地方(Languedoc)のワイン卸業者のオベール(Anthony Auber)氏は、主に手ごろな価格のテーブルワインを扱っていますが、海外では傾向として「軽くて、フルーティーで飲みやすい」ワインが好まれているといいます。

そして「嘆かわしいことに」相手先の国でコルク栓を開ける習慣がないなどの理由で、輸出用のワインのほとんどは、コルク栓ではなくスクリューキャップにして輸出しています。

フランスのレストランもスクリューキャップ歓迎、栓抜きの手間省け

とはいえ売れ筋ワインのカテゴリー、つまり10ユーロ(約1,600円/1ユーロ=約160円)未満のワインなら、スクリューキャップの方がよいと、オベール氏は認めています。なぜなら安いワインは買ったらすぐ飲んでしまうからです。

利便性の高いことから、最近はレストランによっては、コルク栓のワインを購入しないところもあるようです。

レストランやカフェのテラスが満席になっている時に、いちいちコルクの栓を抜いてグラスワインをサーブしていられないからです。

 

スクリュー栓の利点、コルク栓で起こる「ブショネ」がない

コルク栓をフランス語で「ブション」(bouchon)、その汚染が原因でワインが劣化したことを「ブショネ」(bouchonné)といいます。

このワインの劣化の原因を作っているのは、コルクがワインに含まれる塩素に触れることで発生するトリクロロアニソール(TCA)という分子で、異臭を発生させます。

ワインになぜコルクの栓を利用するのか?

コルクはワインの保存において重要な役割を果たします。

コルク栓を利用すれば、瓶を完全に密閉せず微量の酸素を取り入れることが可能になります。これがワインの芳香を進化させ、ワインの熟成プロセスに貢献します。

スクリュー栓、実はフランスが発祥の地

コルク栓ではないワインボトルはフランスでは長い間敬遠されていたため、まさかスクリュー栓を発明したのがフランスの会社だと思う人はほとんどいないようです。

1964年、シャロン=シュール=ソーヌ(Châlons-sur-Saône)にあるブシャージ・メカニック(Bouchage Mécanique)社は「ステルキャップ」(Stelcap)と名付けられた世界初のボトル用アルミニウムスクリューキャップを売り出します。

わずかに酸素を取り入れることを可能にしたこのキャップは、まず蒸留酒に利用されます。

当時、このキャップの注文は、主にスイスの伝統的な品種「シャスラ」(Chasselas)を使ったワインの生産者から来ていました。彼らはアルミのキャップがワインの劣化を避ける最良の解決策だとみていました。

2000年、ワインブームでコルクが不足、スクリューキャップの需要増

フランスでもアルミキャップが注目され始めたのは、2000年初頭、ワインの需要が一気に増えはじめコルクの生産が追い付かなくなった頃からです。

コルク栓が不足すると質の悪いコルクが出回り、「ブショネ」になる瓶が増えたことから、生産者が代替品を探し始めたことが要因です。

現在、「ステルキャップ」は「ステルヴァン」(Stelvin)と改名され、アムコール(Amcor)社によって世界中に輸出されています。

 

便利なスクリュー栓だが、15ユーロ以上のワインになると「売れない」

オーストラリアやニュージーランド、イギリス、ドイツや北欧の国々では、「ステルヴァン」キャップが歓迎されていますが、フランスをはじめイタリア、スペインなどワイン文化の伝統が根付いている国ではまだまだ消費者に受け入れられていません。

パリ郊外でワインショップを経営するピエール・フラモン(Pierre Flament)氏は、「15ユーロ(約2,400円)ぐらいから、アルミキャップのワインは敬遠される」と述べています。同氏の店にある400種類のワインのうち、スクリューキャップのものはわずか6種類にすぎません。

同じワインでもコルク栓なら味に違い

ブルゴーニュ地方(Bourgogne)の高級ワインとして知られる醸造所、ドメーヌ・ムルソー(Domaine Meursault)の共同経営者、アデル・マトロ(Adèle Matrot)氏は、2000年ごろ、同ドメーヌがアルミ栓に替えたものの、ほとんどの同業他社は追従しなかったと言います。

アルミ栓は素晴らしいというマトロ氏、理由として「3000本のワインを作ったら、ほぼ全部同じような味になりますが、コルク栓の場合は3本開けたら3本とも味が違う」ワインになるからだと述べています。

とはいえ、同ドメーヌで作るワインの70%には最高級のコルク栓が使用されています。

フランス消費者や世界のワイン愛好家は、ワインからコルク栓を抜く際のわくわく感、抜いた栓の香りを嗅ぐ、といった伝統的な行為に愛着があることは間違いありません。

同じ年に同じ醸造所で作られたとしても、一本一本味に違いがあるのも楽しみの一つですね。

執筆:マダム・カトウ

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