2024年9月27日(金)、世界的にすっかり定着したテレワークですが、最近グーグル、Meta(旧Facebook)、アップルなどアメリカの企業が100%出勤に戻すなど見直す動きがでています。フランスでも賛否両論あるなか、アマゾンが週5日出勤に、フランス大手企業もテレワークを廃止すると発表し、メディアで話題になっています。
テレワーク導入から3年、グローバル企業で廃止や制限
アマゾンは世界中に30万人いる内勤の社員に対し、来年1月から週3日出社を5日にすると通達しました。アメリカではMetaやグーグルがテレワークの日数を減らし、JPモルガンやテスラも週40時間の出社を義務化するなど、コロナ禍で浸透したテレワークを廃止する動きがでています。
テレワーク率低いフランス
フランス国立統計経済研究所(インセ:Institut National de la Statistique et des Études Économiques)の公表するデータによると、2023年フランスでは企業の約50%がテレワークを採用し、社員の5人に一人がテレワークで仕事をしました。
フランスの平均テレワーク日数は週0.6日で、これはドイツよりも少なく欧州各国平均も若干下回るなど、決して高くありません。
10月にテレワーク廃止反対スト
社員2万人を抱えるフランスのビデオゲーム制作大手、Ubisoft社はテレワーク全面廃止を社員に通達しましたが、組合側は猛反発、10月15日から3日間のストライキを宣言しました。
フランス人事部長の会、副会長のブノワ・セール(Benoît Serre)氏によると、今回の流れは「100%テレワークだった企業が見直し、もしくは廃止」するというもので、フランスでは100%テレワークの企業がごくわずかなため、一気に全面廃止の動きはありません。
理由は、テレワークが普及し始めた時もフランスの企業のトップらは「出社して仕事をする」というこれまでの在り方へのこだわりが強かったことから、全面導入に舵を切る企業が稀だったことが挙げられます。
テレワークの労使協定や社内規定、3年で見直し
2020年のコロナ禍で多くの企業は、それまでごく稀だった社員の在宅勤務を強制的に導入せざるを得ない形で始めましたが、今では「テレワーク」という働き方が労働契約条件の一部となって浸透しています。
フランスの労働法は、2016年から在宅勤務に関する規定を定めています。それによると、在宅勤務の導入には、労使間の合意か、経営側の一方的な決定による社内規定かの2通りのやり方があります。
いずれにしても有効期限は3年で、労使間の合意で導入した場合は見直しにも合意が必要になります。
アメリカで増えた「解雇リスク」、フランスで減った「ズル休み」
在宅勤務の利点は、都市部では、通勤ラッシュを回避できるため労力と時間の節約になり、上司に「監視」されなくても仕事を独立してできるといったことが挙げられます。
欠点としては、特にアメリカでは100%テレワークの人は昇給や昇進に不利になり、解雇リスクが増えることが調査結果で明らかになっています。
これはフランスでもしかりで、カフェテリアで顔を合わせて会話したり、近くの席にいる顔なじみの社員よりも、めったに合わない社員への評価が下がったり、解雇対象になる可能性が上がることは管理者の心理として影響しています。
フランスならではの興味深い現象として、テレワークが導入されてから、1日2日といった短い病欠の数が減っています。
「テレワークありません」は採用に不利、社員定着に課題
人事部長の会のセール氏によると、テレワークが全くない企業は採用に不利になり、もちろんほかに条件のいい仕事が見つからないという理由で、まったくテレワークがないことを承知で就職する人はいますが、2~3年でテレワーク導入企業に転職する確率は高くなります。
また、100%テレワークの企業が日数を制限するよりも、テレワークが週2~3日あった企業がゼロにしてしまう方が「社員の転職を促す確率が高い」と述べています。
実際、フランスの管理職者の50%は、ある調査で「テレワークがなくなれば転職する」と答えています。テレワークにこだわる傾向は若い社員層でさらに強まり、18歳~24歳の3分の2が「転職する」と答えています。
執筆:マダム・カトウ