2025年6月20日(金)、フランスで恒例の「フェット・ドゥ・ラ・ミュージック(”Fête de la musique”:音楽祭)が今年も夏至の21日(土)に開催されます。パリも、市内のあちこちで、素人のロックバンドから大がかりなコンサートまで、街中が音楽であふれます。このイベントが最近なぜか「あこがれ」のイベントとしてTikTokで紹介され、イギリスを中心に欧州の若者の間で拡散されています。今年は土曜日とあって多くの若者がパリに押し寄せそうです。
音楽祭、パリ市民には「下手な高校生バンド」や「路上DJ」で、単なる「どんちゃん騒ぎ」
1982年の初回開催から40年以上がたったこの音楽祭、当初のコンセプトは「一般市民誰もが公道で演奏できる」で、カフェの前や広場の路上、もしくはちょっとしたステージを建て、アマチュアバンドからプロの演奏までが楽しめます。
と言えば聞こえはいいのですが、実際のところはどうかというと、多くのパリ市民にとっては、下手な高校生バンドがニルヴァーナやオアシスの曲を演奏し、カフェのテラスではDJが轟音でテクノをかけている通りを、「生ぬるくなったビール片手にぶらぶら散歩する」程度のイベントにすぎません。
場所によっては、いろんな種類の音楽が混ざって、単なる「騒音」になっているケースも多々あります。
「絶対行くべき!」投稿、TikTok上の拡散で「憧れのイベント」に
ところが近年、このイベントがイギリスをはじめとするフランスの近隣国や、オランダやドイツなど欧州の国々では「絶対参加したい」あこがれのイベントとしてTikTokで拡散されているのです。
昨年パリに住んでいたという20代のデンマーク人、セシル(Cecilie)さん、「TikTokの投稿を見てると、去年自分が行った場所よりもっとクールなところがあるみたい。今年こそ好きな音楽が聴ける場所に行くつもり」と、今週末パリで友人たちと好天気(猛暑?)のなか、美味しいお酒といい音楽で楽しめることを期待しています。
とはいえ、年々大規模になり、今では市がオーガナイズした大掛かりな無料コンサートがあちこちで開催されるのが当たり前になりました。
おすすめルックは「大人っぽくてセクシー」に、英スタイリスト
パリ音楽祭という「一大イベント」参加のための、ちょっと大げさな準備の投稿も多くみられます。
その一人、ロンドンのスタイリストでイメージコンサルタントのロレッタ(Lauretta)さんは、パリの路上コンサートを楽しみながらそぞろ歩くおすすめのスタイルは「大人っぽくセクシー」をすすめています。
海外でなぜか「夢の祭典?」に、詐欺行為も
近隣国の若者の異常な関心に、地元のフランス人や海外在住のフランス人たちは、「美化されすぎた」この単なる「路上音楽」祭りへの過剰なあこがれを「集団妄想」と揶揄しています。
そして、こういったイベントにつきものの、詐欺行為も登場しています。
路上のコンサート、パリ市主催の屋外コンサートなどは「無料」で開催されるにもかかわらず、「入場券」を販売する詐欺もでています。
米インフルエンサー、単なる「ブロックパーティ」よ!
このイベントを過剰に美化したSNS投稿に対し、パリ在住8年のアメリカ人インフルエンサー、キアナ(Kiana Tise)さんは、「あまり過剰な期待はしないで」、単なる「ご近所さんパーティ」みたいなものだと投稿しています。
必要な準備は、「履きやすいスニーカー、トートバッグに貴重品と携帯の外付けバッテリー、水筒、チューインガムをいれておくだけ」、と説明しています。
とはいえ、パリのメトロではよくこんな光景を目にします。
英語圏の若い女性が4~5人のグループで全員ミニスカートのセクシーなワンピースにハイヒールを履き、マスカラまでばっちりひいたフルメイクに、美容院から出たばかりのような完璧なヘアーをなびかせ、大声で話しています
深夜近くになると、彼女たちは缶ビールやワインの瓶を手に、すっかり酔っぱらってぐでんぐでんになっています。
そんな彼女たちの傍らで、さっぱりした服装にスニーカー、ナチュラルメイクのパリジェンヌが冷ややかな目を向けている-そんな光景が今年もみられるのでしょうか?
フェット・ドゥ・ラ・ミュージック、プログラムはこちら(パリ市)
執筆:マダム・カトウ