2025年6月12日(木)、フランス国立銀行(Banque de France)は、トランプ関税やウクライナ戦争により弱体化したフランス経済の今年の見通しについて、この3か月間で2度目の下方修正を行いました。これについて頭取フランソワ・ヴィルロワ=ドゥ=ガロー(François Villeroy de Galhau)氏が見解を述べています。
フランスの経済成長率わずか0.6%に
コロコロ変わるトランプ関税に振り回される世界経済、フランスも例にもれずその悪影響を避けることはできません。
追加関税だけをみても、フランスのGDPは0.1ポイント下がりますが、これに加えて、先の見通し不透明感が企業や消費者に与える悪影響で-0.3%、合計-0.4ポイント下方修正されています。
仏政府、来年の財源探しの真っ最中
フランス政府は昨年の財政赤字、対GDP(国内総生産:PIB)の5.8%に達したことを受け、今年は5.5%以下におさえ、さらに2026年には4.6%に引き下げることを目標に掲げており、最終的には、コロナ禍前のEUが掲げていた、加盟国の財政赤字対GDP比3%以下という目標の達成を目指しています。
そして現在、来年の目標達成に向け、400億ユーロ(約6兆5417億円/1ユーロ=166円)の財源確保の真っ只中にいます。
そんな中、年初0.9%だった今年の経済成長率の予測は3月には0.7%に、そして昨日、0.6%に下方修正されています。
トランプ関税が引き起こす「カオス」、フランスは欧州の「劣等生」に
フランス国立銀行が予測した2026年の経済成長予想も、2026年で1%(-0.2ポイント)、27年で1.2%(-0.1ポイント)といずれも年初の発表から下げられています。
同銀行頭取フランソワ・ヴィルロワ=ドゥ=ガロー(François Villeroy de Galhau)氏は、トランプ関税によって引き起こされた混乱は、「まずはアメリカ自体の経済成長を妨げ、次に世界経済全体に重くのしかかってくる」との見通しを明らかにしています。
フランス経済への影響については、「不況」は免れるが、経済成長率では「欧州近隣国に追い抜かれるだろう」と指摘し、さらに「たとえ2026年に財政赤字をGDP比4.6%にまで削減できたとしても、フランスはユーロ圏の中では依然として劣等生のままだろう」と述べています。
国民全員に公平な努力、まずは富裕層から
同氏は、財政赤字の改善には「国民全員の協力」と「公平」であることが不可欠で、そのためには、まず富裕層に「努力」を求めるべきだと主張しています。
対EUトランプ関税、「取り下げ」には悲観的
対ユーロ圏へのアメリカの追加関税は、現在90日間の猶予期間中で、期限は7月9日に迫っています。
施行されると、EUからの輸入品すべてに10%、鋼鉄、自動車には25%の追加関税が課され、特に農産物・食品輸出のうちアメリカ市場向けが約14%と高いフランスには大きな打撃となります。
2024年にフランスの経済成長をけん引した輸出は、今後トランプ関税とユーロ高で対EU圏外向けは減速すると見られ、今年第二四半期の成長率はわずか0.1%とみられています。
よって、2025年のフランス経済は、国内消費、公共事業及び在庫変動が支えることになります。
インフレ1%台、来年以降、賃金の上昇で消費活発に
フランス国立銀行は、今年のインフレ率は、エネルギー価格の下落を受け、1%(-0.3ポイント)とみています。
2026年から27年にかけ、賃金の上昇がインフレ率を越えることで、購買力が向上し家庭消費が増えると予想されます。特に、企業および個人の不動産消費は利息が下がることで活発になる見通しです。
失業率は横ばい予想
経済の不振が続く中、失業率予想のほうは今年7.6%、26年は7.7%、27年は7.4%と、比較的安定しており、しばらく横ばいが続くとフランス国立銀行は予測しています。
執筆:マダム・カトウ