2024年8月23日(金)、エールフランス航空は現在週3便運航しているパリ−成田線を、10月26日より運休すると発表しました。少なくとも来年3月末までの冬期スケジュールの間は全フライトが欠航となっており、今後再開するかは不明です。訪日ブームで人気の高い日本行の減便、実は運休理由は別のところにあります。
パリ―成田線、「天国に一番近い島」ニューカレドニア行の乗り継ぎ便
エールフランスは今年の冬もパリ―成田間のフライトを週3便、クリスマス前から年明けまでは週4便運航する予定でした。
実はこの成田線は日本行きというより、フランス海外領土(DOM-TOM(départements d’outre-mer et territoires d’outre-mer、海外県・海外領土(注)の一つ、ニューカレドニア(Nouvelle-Calédonie)の首都、ヌメア(Nouméa))行きの乗り継ぎ便として運行されています。
成田からヌメアは、現在ニューカレドニア政府が99%株を持つ、エアカラン航空(Air Calin)によって運行されていますが、同社はヌメア−成田線を9月から運休すると発表しています。
国営エアカラン航空、春の暴動から全フライトの3分の2減便で経営難
ニューカレドニアでは、今年の春大きな暴動が起こり、非常事態宣言が発令された5月中旬から7月上旬までの間、全フライトの66%がキャンセルされました。
同社は大幅な減便で資金繰りが悪化、わずか3時間ほどのオーストラリア、ニュージーランド路線に続き、日本行きも運休となり、社員の半分以上が労働時間を減らされるなどの事態に陥っています。
経済苦境の中、先住民優遇策だった参政権「拡大」が引き金
日本で「天国に一番近い島」として知られる世界屈指のリゾート地、ニューカレドニアの収入源は輸出額の8割以上を占めるニッケルの輸出と観光頼みですが、昨年ニッケルの価格が暴落、観光収入は2020年のコロナ禍からの回復に時間がかかるなど、ここ数年地元経済は苦境に陥っていました。
工場停止で解雇される労働者がいる一方で、ヨーロッパからの移住者との格差も広がるなど、潜在的な社会問題が露呈されました。
フランス議会、参政権拡大を可決で暴動激化
そんな中、暴動の直接的なきっかけを作ったのは、5月15日、フランス議会の憲法改正でした。
ニューカレドニアでは人口の40%を占める先住民、カナックの人たちの権利を尊重するため、地方選挙の参政権が「1998年以前にニューカレドニアで選挙人名簿に登録されていた人」に限定されてきました。これを「現地に10年以上暮らす住民にも拡大する」という法案が可決され、怒ったカナック系住民の暴動が激化しました。
成田便、10月26日より羽田便に振り替え
パリ−成田間の予約がすでに入っている場合、羽田発着に振り替えられます。パリ発ヌメア行に関しては、シンガポール経由に振り替えられます。シンガポールからヌメアまではエアカラン航空が運航しています。
成田行きに関しては、エールフランスKLM航空のKLM便がアムステルダム経由で運行しており、引き続き利用できます。
(注)現在はDROM-COM(仏語:départements et régions d’outre-mer et collectivités d’outre-mer、海外県・海外地域及びコミュニティー)として呼ばれている。
執筆:マダム・カトウ