2024年4月23日(火)、EU議員選挙を6月に控え、加盟国内で大規模な世論調査が行われた結果、フランス人はEUの将来に最も悲観的な国民だということがわかりました。
フランスを筆頭にEU加盟国内で広がる、EUの将来への悲観
EU加盟国27か国で約26,000人、うちフランス人約1,000人を対象に行われた世論調査で、フランス人はEUの将来に悲観的な人が52%と、楽観的な人42%よりも多くなっています。
この現象はフランスだけではなく、他の加盟国でも過去2~3年で顕著になってきています。
隣国ドイツでは「EUの将来を楽観」している人が今回の調査でも過半数以上を占めましたが、「悲観的」と答えた人が前回より着実に増えています。
EU議会選に関心が高いフランス
フランス人はEUの将来に悲観的でEU議員選挙への関心は高く、「投票に行くつもり」と回答した人は67%にも上り、前回2029年よりも高く、さらにドイツなど欧州他国よりも高い数値になっています。
ウクライナ、ガザ、国際紛争で欧州議会の重要性増
フランス人に限らず、回答者全体の80%がウクライナやガザで起こっている戦争により、EU議会の重要性が「今まで以上に増している」と答えています。
今回の調査では、EU加盟国の人々にとって「防衛と治安維持」が今後EU議会の最も重要な課題だと考えていることが明らかになりました。
フランス人の関心事としては、貧困の解消、地球温暖化対策および公共衛生が上位を占めています。一方フランスがEUから補助金などで最も恩恵を受けている、農業政策は4番目になっています。
フランスはもう超大国ではない?
フランス人がEUを悲観視する原因として、欧州連合はフランス人に「フランスがもう世界のスーパーパワーではないことを思い知らせるから」だとシンクタンク「ユーロパノヴァ」(EuropaNova)の代表ギヨーム・クロッサ(Guillaume Klossa)氏は分析しています。
フランスの政治家は右派左派関係なくいつの時代も「フランスは世界の超大国であり続ける」という考えを国民に植え付けることを熱心に行ってきました。しかし、世界経済などを含め外から入ってくる情報で実際はその逆の方向に進んでいることがわかり自己矛盾に陥っている、と同氏は説明しています。
その証拠に、EU議会で決議される様々な規制など、一国だけでコントロールできないことが発生します。
情熱、将来への展望が欠落、フランス人の心に響かない
こういった構造的な部分に加え、今回の議会選挙の立候補者は若い世代が多いため経験値が低く、議論もテクニカルな内容になり「情熱に欠ける」ことも欧州議会に対する不信感の一因となっているようです。
また、戦争、温暖化といった、世界の変化への不安が募る中、フランス人はヨーロッパが衰退していると感じています。ブレグジットでEUの連帯が崩れ、「EUの失敗」として脳裏にきざまれています。
そんな中、フランス人は今後ヨーロッパは世界の中の強者でいられるのか?と疑問を抱いています。
フランス人は「EUが自分たちを守り、将来の展望を持たせてくれることを期待している」と、クロッサ氏は述べています。
執筆:マダム・カトウ