2024年2月2日(金)、40年前にコルシカ島のアジャクシオ(Ajaccio)北部で漁中に発見した金の財宝を警察に届け出ず、自ら引き上げ隠蔽、売却した罪でコルシカの元漁師がフランス政府より起訴されています。発見された金貨は、実は三世紀古代ローマ時代の「ラヴァの宝物」で、その価値は計り知れない国宝級のものでした。
陸で拾えば自分のもの、海で拾えば国のもの
1985年、漁師フェリックス・ビアンカマリア(Félix Biancamaria)氏(67歳)は、弟アンジュ(Ange) と友人の3人で、アジャクオから17㎞北に位置するラヴァ湾(golfe de Lava)にウニ漁にでかけ、複数の金貨を発見します。
これらはすべて紀元三世紀ローマ帝国初期のもので、金貨にはガリエヌス(Gallien)、クラウディウス2世(Claude II)クインティーユ(Quintille) 、アウレリアヌス(Aurélien)の4皇帝の肖像が刻印されていました。
同氏はこの発見物の一部をパリ証券取引所近辺の金・貴金属商に売却したことが発覚、1995年「難破船遺留物窃盗及び転売」の罪で、弟ともに執行猶予付き18か月の禁固刑と罰金を言い渡されています。
実は、フランスでは陸で見つけた拾い物に関しては、所有権を主張することができます。届け出をすると持ち主に対し50%の対価を請求することができます。
ところが、海中で見つけたものに関しては、すべてフランス国家の所有物と法で定められているのです。
25年後、隠蔽した金の器を所持、再逮捕
2010年、ビアンカマリア氏はブリュッセルからの帰り、TGVロワシー駅で再逮捕されます。その時同氏が所持していたオレンジのスポーツバッグには、隠蔽していた金の器(直径約25㎝)が入っていました。
この器は金貨の発見時に見つけたものでしたが、ビアンカマリア氏は逮捕時に引き渡さず隠し持っていました。
「コルシカの誇り」となるはずだったを国宝級の文化遺産
1月30日にマルセイユ軽犯罪裁判所で行われた裁判で、判事は「古代ローマ時代の遺産を不法所持、破壊した罪」で、ビアンカマリア氏に対し、執行猶予付き2年の禁固刑および15万ユーロ(約2,370万円/1ユーロ=約158円)の罰金を、また共犯とみられるビアンカマリア氏の友人、ジャン=ミッシェル・リショー(Jean-Michel Richaud)氏(68歳)には執行猶予付き禁固刑10か月および罰金15,000ユーロ(約2,370,000円)を請求しました。
さらに両名に対し、税関より「国宝級海洋文化遺産の不法所有と隠蔽」により80万ユーロの罰金が請求されました。
「ラヴァの宝物」の発見、本の出版で注目され墓穴
9時間の裁判中、無罪を主張する2人の被告の供述は二転三転し、争点である「海中で見つけた」ことを覆そうと支離滅裂な反撃を繰り返していました。
コロコロ変わるストーリーに判事はしびれを切らした様子で「あなたの本に岩と岩の間にある金の器を海中からどうやって引き上げたか事細かに書いてありますよ」とビアンカマリア氏の本の一節を読み上げました。
これに対し同氏は「その本はフィクションでおれは読んでいない、誰かが勝手に書いた」、「器は陸で見つけた」との主張を繰り返しています。一方判事は「あなたは本にサインまでしていますよ」と応酬する場面もありました。
2010年にブリュッセルでの売却に失敗した金の器に関しては、当時は「リショー氏から渡された」と供述していましたが、昨日の裁判では「前の弁護士にそう言えといわれた」などと発言、リショー氏とは「ロレックスの売買の相談はしたが、金の器の話はしていない」と供述しています。
争点となった「陸か海か」に関しては、「陸で拾った」という証拠が一切ないという理由で、被告側の主張は全面的に退けられています。
この「茶番劇」の真相が判明するかは不明ですが、どのような判決が下るか注目されています。
執筆;マダム・カトウ