ゴ・エ・ミヨの看板（星ではなく、コック帽で評価）
2023年11月10日（金）、ミシュランガイドと並びフランスで最も権威のあるグルメガイド、ゴー・エ・ミヨ（Gault & Millau）の24年版の最優秀ソムリエに、ジャン＝バティスト・クラン（Jean-Baptiste Klein）氏が選ばれました。
アルザス地方の２ツ星レストランのソムリエ、クラン氏
ゴー・エ・ミヨが最優秀ソムリエに選んだジャン＝バティスト・クラン氏は、アルザス（Alsace）ワイン街道として知られるカイザースベルク（仏語読み「ケゼルスベール」：Kayserberg）のミシュラン２ツ星レストラン「ル・シャンバール」（”le Chambard”）のソムリエ長（chef sommelier）を勤めています。
同氏と共に最終選考に残ったのは、南仏エクス＝アン＝プロヴァンス（Aix-en-Provence）のレストラン「ラ・ゴード」（” La Gaude”）のニコラ・パルマンティエ（Nicolas Parmentier）氏、 リヨンの南35キロに位置するヴィエンヌ（Vienne）のレストラン「ラ・ピラミッド」（ “la Pyramide”）のエルヴェ・バリガン（Hervé Balligand）氏、そしてブルゴーニュ地方のソリユー（Saulieu）の老舗「ルレ・ベルナール・ロワゾー」（”Relais Bernard Loiseau”）のエリック・ゴテルマン（Eric Goettelmann）の男性ソムリエ３人でした。
「斬新」と「伝統」のメランジュ
クラン氏は今回強豪の中で「失敗を恐れない斬新さと伝統の融合」が評価され最優秀ソムリエの称号を獲得していますが、2017年、すでにゴー・エ・ミヨーガイドの「今年の若手ソムリエ賞」に選ばれている実力の持ち主です。翌18年には、フランスの職人にとって最も名誉ある、国家最優秀職人章（Meilleur Ouvrier de France：MOF）を授与されています。
ル・シャンバールの２ツ星シェフ、オリヴィエ・ナスティ（Olivier Nasti）氏は、「とにかくなんでも味見する」クラン氏にワインに関しては「一切口を出さない」そうです。それどころか、ワインのチョイスに合わせて料理の内容を変更したり、決定したりすることもあるほど絶大な信頼をおいています。
３ツ星レストランをへて、地元アルザスのレストランへ
クラン氏はアルザス地方のマンステール（Munster）のホテル、ヴェルト・ヴァレー（hôtel Verte Vallée）で下積みした後、クールシュヴェル（Courchevel）のミシュラン２ツ星レストラン「ル・シャビシュー」（le Chabichou）でソムリエ助手をつとめ、オーヴェルニュ＝ローヌ＝アルプ（Auvergne-Rhône-Alpes）地方のサン＝ボネ＝ル＝フロア（Saint-Bonnet-le-Froid）の３ツ星シェフ、ジャック、レジス・マルコン（Jacques et Régis Marcon）氏の元で修行します。
その後南仏カンヌの北７km、風光明媚なムージャン（Mougins）にあるレストラン「ムーラン・ドゥ・ムージャン」（Moulin de Mougins）でソムリエ長デビューを果たします。
さらにサヴォア地方（Savoie）アヌシー（Annecy）にあるミシュラン３ツ星レストランで、膨大なワインセレクションでも知られる「クロ・デ・ソンス」（Clos des Sens）をへて地元アルザスの「ル・シャンバール」にソムリエ長として就任します。
先入観なく「オープンマインド」でワインを
クラン氏は、こういった店にふさわしく、控えめかつエレガントにテーブルの間を行き来します。内向的だが自信が見え隠れする彼は、テーブルに就く前からその場の雰囲気を大変な正確さで汲み取れる稀有なソムリエの一人です。
客の好みのワインを選ぶだけでなく、好奇心の強い方にはお任せで食事に合うワインを選んでブラインドテイストし、後から銘柄を見せてそのワインの歴史や作り手の哲学を伝えたり、味覚のサプライズを演出することもあります。
「斬新」という評価を受けた通り、ワインを飲む人に好みに拘らずいろいろな品種や銘柄をオープンマインドで試してみることをすすめています。
クラン氏はこれからの時代を担うフランスのソムリエとして、注目を浴びています。
執筆：マダム・カトウ
