2023年3月21日(火)、20年前のフランスで最も利用されていた支払い方法は小切手でした。クレジットカードの普及、特にコロナ禍で暗証番号を入力しない「タッチ決済」が急速に普及して以来、小切手払いは消滅したかのように見えますが、実は現在も根強く残っています。
激減しても「なくならない」小切手
現金、カードなど、全決済方法のうち、小切手払いの割合は現在3.9%しかなく、2015年に11%だったことを考えると、消えてなくなってもおかしくありません
一方、カード決済は2020年に45%、21年には57%と増え続けています。
欧州圏で発行された小切手、80%がフランスのもの
激減しているとはいえ、フランスにおける小切手の利用は、まだこの決済方法を維持しているEU圏の数少ない国々の中でダントツに多いのです。
BNP パリバ銀行(BNP Paribas)で、個人客の決済手段責任者、カトリーヌ・ボワダン(Catherine Boidin)氏は「欧州圏内で発行された全ての小切手の10枚に8枚がフランスで発行されているんです」と語っています。
2021年、11億ユーロが小切手決済
小切手決済がなくならない理由の一つは、フランスの法律にあります。
フランスの中央銀行であるフランス銀行は、一般の預金者の金銭を預かる市中銀行に対し、手数料のかからない決済方法を提供すること、つまり小切手の配布を義務付けています。
そのため2021年の小切手による決済額は11億ユーロ(約1,566億円/1ユーロ=約140円)にも上ります。
もし預金者が希望しなければ、小切手の受け取りを拒否することもできますが、実際は小切手による支払いを求められるケースが多々あるのです。
医者や学校、旅行の前金支払いなど、小切手需要は様々
いまだに小切手しか受け付けないというケースでは、子供の学校の遠足費用の支払いなどがあります。
学校が現金の管理を嫌がるためですが、自営業者、特に弁護士、開業医の中にカード支払いを受け付けない人がいます。
小切手の持参を忘れ、受診後に現金を引き出しに最寄りのATMまで往復した経験がある人も多いでしょう。
旅行会社でバカンスの予約をする際、手付金の支払いに小切手を受け付けるところがまだあります。
分割、レンタルなどでも
学校の授業料などでやむなく分割払いをお願いする際に、小切手を数枚渡して「毎月一枚ずつ引き落としてもらう」という使い方もされています。
レンタル業者で小切手を保証として預かり、破損した、キャンセルになった時だけ引き落とすという場合もあります。
企業でも、以前は社員が退職する際の最後の給与を小切手で渡すことが義務付けられていました。
小切手による詐欺、全体の37%で最多
スマホやスマートウォッチでも支払いができる今の時代に小切手は利用され続けていますが、実はこの決済方法が最も詐欺被害が多いのです。
小切手による詐欺は全体の4割を占め、1件あたりの被害額は1,948ユーロ(約277,000円/1ユーロ=約140円)とかなりの高額です。
「小切手渡すから現金都合して」詐欺
小切手による被害は、小切手帳の盗難、サインの偽造も多いものの、単純な詐欺も横行しています。
「銀行に行く時間がないが現金が必要だ、小切を手渡すから現金を都合してくれないか?」とよく知らない人から聞かれたら、断った方がいいでしょう。
「フランス銀行発行」のニセ小切手詐欺
最近フランス銀行は、今年に入り同行のニセ小切手による詐欺が多発しているため注意を呼びかけています。
フランス銀行は2021年以降、一般の預金口座の取り扱いを停止しており、現在個人が同行の小切手で決済を行うことはありません。
もし誰かがフランス銀行の小切手で支払おうとしたら、詐欺だと思った方がいいでしょう。
執筆:マダム・カトウ