ここ最近、フランスでは電気代から日用品まで物価の値上がりを感じます。そして夏のバカンスも終わり、思いっきり遊びつくしたフランスの人たち。彼らが我に返る”秋”のテーマの1つに、お金があげられます。
新年度スタートの9月は生活スタイルを見直すいい機会。そして12月のクリスマス時期は、イベントやプレゼントなどで再び出費がかさむ時期です。今回は、2022年10月現在のフランスのお金と副業についてレポートします。
副業に対するフランス人の考え方
少し前まで日本の副業の話を聞くと、フランス人達は「ねぇ、日本では仕事を掛け持ちしなければいけないほど、本職のお給料を十分にもらえていないの?」という反応が返ってきました。定年後も働く日本人が多いことにも驚いています。
私が、「副業も無理やりやっているのではなく、本人が楽しんでやっていて副収入があれば嬉しいという感覚のものだ」と説明しても、フランス人達は日本の生活は厳しそうだなというイメージを持っていたようです。
「バカンスもほとんどなくて、どこまで働くのが好きな国民なの!」という、同情交じりのコメントばかりでした。
現在フランスではバゲットやガソリン代、電気代など値上がりが加速しており、一部の食料品(マスタードやサラダ油)は不足状態。買い物に慎重になっている消費者が増えています。
先日も、1つのガソリンスタンドに20台くらいの車が給油待ちをしていました。値段が他店より安いからなのかと思いきや、近所でガソリンが給油できるところがそこしかなくお客が殺到していたことがわかりました。
フランス人はフリマを利用したり、DIYをしたり、古いものを大切にするなど、自然体で支出を抑える行動をしています。そのためのアイデアも、豊富に湧いてくるようです。
しかし収入を増やすとなるとどうでしょうか?どちらかというと消極的な印象がありましたが、ここ最近は本職以外に副収入を得ることがじわじわと浸透し始めたように思います。
副業はフランスでは petit boulot ( プティ ブロ ) という表現をされます。ちょっとした仕事という意味です。では、プライベート重視のフランスの人々が受け入れる副業とはどういう仕事なのでしょうか?
フランスで定番の副業ベスト3!
フランスの副業を紹介します。まずは、一般的な王道の副業を3つほど挙げてみます。
1.ベビーシッター
フランスでベビーシッターは定番の仕事です。ベーカリーやスーパーの掲示板などで、よく募集やサービス提供の告知の張り紙を目にするほどです。フランスでは子どもがいても週末に夫婦二人で外出したり、パートナーの仕事の付き合いでカップルで出席する機会が多いことが理由でしょう。
また、結婚式などの参列者の子どもたちを預かる仕事や、学校帰りの子どものお迎え依頼も多いです。どちらかというと週末に発生する依頼なので、学生向けの仕事になっています。日本よりも、子どもを他人に託すことに抵抗感が低い印象を受けます。
2.ペットシッター
バカンスや長時間の外出時にペットのお守りをしてあげるサービスです。ペットも大事な家族の一員。一度、依頼主及びペットと信頼関係が築けると、定期的にお願いされることもあるそうです。
ご近所さんに声をかけておくと口コミで依頼が来ることもありますし、一度に複数のペットを預かることも可能です。動物が好きな人は楽しみながら報酬を得ることができますし、需要はかなりあると感じます。
3.家事や庭仕事などの代行
一人暮らしのご年配の方や、ケガなどで身動きがとれない方の身の回りのお世話をしてあげるサービスです。こちらもベビーシッターと同じく、募集とサービス提供のお知らせがお店に貼ってあります。
フランス人は、すべての衣類(パンツや靴下も含む)とリネンにアイロンをかける家庭も多いので、アイロンのみで2時間というサービスも提供できます。こちらはご年配の方からの依頼が多く、話の接点などを合わせやすい中年の方のサービスを望まれる場合が多いようです。
どれも目新しい仕事ではありませんが、携帯電話があればサイトなどに登録せずにおこなえます。
サイトに登録してお小遣い稼ぎ!
1.車の相乗りのマッチングサイト
有名なサイト blabla car ( ブラブラカー ) は、私の周りでも利用者が多いです。車の運転があまり好きではなく、交通機関が不便なところに住んでいる人にはありがたいサービスといえるでしょう。
自分が移動するついでに他の人も乗せてあげて報酬を得ることができ、誰でも気軽に始めやすい副業です。
2.中古売買のサイト
日本のメルカリにあたるサイトが2つほどフランスには存在します。vinted ( ヴィンテッド ) と le bon coin (ル ボン コワン ) です。不要な物を売買できる仲介サイトですが、登録料がないので多くの人が利用しています。
使わなくなったゲームソフト、プレゼントでもらったけれど使わないコスメキット、車の部品など、ありとあらゆるものが出品されています。不用品以外にも、畑で大量に採れたじゃがいもを安く売るなどのアノンスもあり、ジャンルが広いのも特徴です。
フランス政府は副業を応援?
フランスでは「個人事業主として登録をする」という条件をクリアしていれば、本職以外の副業で収入を得ることは全く問題ありません。
フランス語では auto-entrepreneur と呼ばれています。
簡単にこのシステムを説明すると
1.登録に際してキャピタルは必要なく、簡単にネットで申請が可能
2.登録番号を保持することにより、会社と取引が可能
3.売り上げに対して約25%納税の義務はあるが、売り上げがない場合は免除
政府は簡単に開業できるシステムを作り、課税の条件も低く設定していることから支援しているというスタンスです。
フランスでは「全ての金銭のやり取りから税金を取ろうとするコントロールだ」と捉える人たちもおり、個人事業主登録をしてまで副業で報酬を得ることに批判的な意見もあります。
まとめ
フランスの副業は、”ちょっとしたお小遣い稼ぎ”という感覚でおこなわれているように感じます。お金に対する漠然とした不安はあっても、表立って話題にはなっていません。フランスでは、「生活するために働くのであって、働くために生きるのではない」という観念がベースにあり、ワークバランスをとても大切にしています。今のところ積極的に稼ぐよりも、上手に支出を抑える傾向が強いです。投資の話題なども普段はあまり出てきませんが、今後ゆっくりと変化していくのかもしれません。
執筆YUKO