8月27日(金)、待ちに待たれたフランス国産の新型コロナワクチンですが、現在製薬会社仏墺バルネバ社(Valneva)と仏サノフィ社 (Sanofi)の2社が臨床試験の最終段階に入り、年内の認可を目指しています。
バルネバ社イギリスで認可申請、12月には供給可能に
現在両社とも新薬の承認までに必要な臨床試験の3段階(フェーズ1〜3)のうちフェーズ3に入っています。
西フランスのナント(Nantes)に本社を置くバルネバ社は23日、完成に先立ってイギリス保健省に認可を申請し、イギリス政府と臨床試験の完了を条件にするなどのオプション付きで1億本の購入契約を結んだと発表しました。
世界初のファイザー社製新型コロナワクチンの接種が開始されてからすでに1年が経ち、ようやくお目見えするフランス産ワクチンへの期待が高まっていますが、同時に「後発のワクチンが市場でシェアを取れるのか?」と懸念されています。
サノフィ、バルネバ、先発ワクチンと異なる技術
ファイザー社とモデルナ社のワクチンは従来型のワクチンとは違い、メッセンジャーRNA(mRNA)という今まで実用化されていない新しい技術で作られている事ことから「ワクチン懐疑派」を生み出しています。
一方、アストラゼネカ社、ジョンソンエンドジョンソン社のワクチンは「ウイルスベクターワクチン」と呼ばれ、ごく稀なケースで血栓ができる関係から嫌疑する人がいます。
仏サノフィ社は現在最終試験中のワクチンについて、「既に自社で開発し実用化されている」インフルエンザのワクチンに使われるテクニックを一部利用し、「革新的かつ信頼できる」手法で作られていると発表しています。
また、既に実用化されている日本脳炎やコレラのワクチンで知られるバルネバ社の新型コロナワクチンは、不活化されたウイルスを利用した手法で作られており、副作用がほとんどないと言われています。
現在この手法で開発されたワクチンが実用化されていないことから、フランス産業担当大臣(ministre de l’Industrie)アニエス・パニエ=リュナシェ(Agnès Pannier-Runacher)氏は「(新型コロナ感染対策の)新たな武器となるだろう」と歓迎しています。
3回目の接種開始のワクチン需要に期待
産業担当大臣は両社のワクチンが市場に出回る頃には、既に「フランス国民は2回の接種をほぼ完了している」と予測していますが、既に一部の国で3回目の接種が開始されており、フランスでも9月13日から65歳以上への3回目の接種が始まることから、製品化された国産ワクチンは「買い手に困らないだろう」と述べています。
フランスにおける3回目の接種は8月30日から開始され、約600万人が対象となります。今後64歳以下の接種も開始されれば対象者は1,200万人にも登ります。
世界でワクチン格差、アフリカなど未接種国に商機
フランス国産ワクチンは後発ではあるものの、既にファイザー社やモデルナ社のワクチンで接種が進む先進国ではなく、1回目の接種すら進んでいない多くの国での大きな需要が見込まれています。
テドロス・アダノム世界保健機関(WHO)事務局長は、アフリカ大陸諸国が参加する健康に関するテレビ会議に出席し、「世界140カ国が少なくとも国民の10%の接種を終えています。しかしながら、アフリカ大陸ではこの(低い)目標ですら達成できている国はわずか4カ国しかありません」と、世界におけるワクチン分配の「ショッキングなほどの不公平」が横行していると述べています。
通常の冷蔵保存で、暑い国への供給が可能
国産2社のワクチンが先発のファイザー社、モデルナ製と異なるもう一つの点は、保存に関するものです。
メッセンジャーRNA(mRNA)で作られた先発2社のワクチンは、超低温の特別な冷蔵庫が必要なため、発展途上国には費用面でも大きな負担になることも接種が進まない原因となっています。
サノフィ社、バルネバ社両社のワクチンは、2℃〜8℃で通常の冷蔵庫での保存が可能な為ため、発展途上国、特にアフリカなど暑い国への供給が安易になります。
執筆:マダム・カトウ