テラス営業が解禁になったパリのカフェに集まる人々(筆者撮影)
6月1日(火)、ワクチン接種が進み、感染者や入院者が減少し次第に元の日常へと戻りつつあるフランスでは、ロックダウンによる営業禁止や業務縮小で休業を強いられた人たちも、ロックダウンの段階的解除で徐々に職場へ戻っています。そんな中、すでに1年休業し、未だに職場に復帰できない人たちがいます。
2020年のピーク時840万人が休業
仏労働局が発表したデータによると、昨年4月フランスの第一回目のロックダウン中に休業した人は840万人でした。それから1年経った今年の4月時点で、未だに270万人が休業しています。
フランスにおける社員の休業は労働局で管理されており、平常時も「会社の売り上げの大幅減」などの場合に許可されます。ロックダウンで「営業禁止」となったり「外出禁止」で実質営業活動が不可能になったことから、申請した企業の業種は多岐に渡ります。
休業手当6月1日より徐々に減額
過去1年間にわたり休業した社員は手取り給与の84%を受け取り、企業側は15%、残りを国が負担していました。さらに、政府が「特に支援」する旅行業界、ホテル、飲食業、スポーツクラブや文化施設、イベント業界などの営業禁止対象になった業界や商店などは、その期間100%国が負担しています。
6月1日より休業支援の企業負担は25%と徐々に増額され、7月には40%になります。また、社員の給与は7月より手取りの72%に減額されます。
特別支援を受けている業界に関しては、企業負担の増額は8月から、社員の手取り減額は9月からになります。
1年間「本業」がなくなった人たち
ナイトクラブの従業員マリアの1年
昨年の最初のロックダウンから1年以上営業禁止が続く、ディスコやナイトクラブの従業員たちは今だに休業を続けています。
マリア(Maria、25歳)は店が閉店になる前日の夜、「ダンスフロアーには入りきれないぐらいの人が踊っていました。当時はマスクもなく、今考えるとゾッとする」と振り返っています。でもまさかこの時が昨年で最後の出社になるとは夢にも思っていませんでした。
あれから1年以上経ち、多くの同僚たちと音信不通になっています。マリア曰く「最初の3週間ぐらいは自宅のソファーに寝そべって何もしないでお給料もらえるなんてラッキー」と思っていましたが、時間が経つにつれ「不安がのしかかってくるようになった」と話しています。
今では再開の日を心待ちにしていますが、ナイトクラブやディスコの営業再開は未だに決まっていません。
会社を辞めて憧れの職業DJになったばかりのシルヴェール
新型コロナ禍が始まる6ヶ月前に正社員の仕事を辞め、DJになるためロンドンに移り住んだシルヴェール(Silvère、32歳)は、昨年のロックダウン前日、3月16日にフランスに戻ってきました。
個人事業主に転身したため、国の補助は月1500ユーロ(約20万円/1ユーロ=134円)で、ナイトクラブは現在もなお閉まっているため1年以上DJの仕事がありません。
ただ悪いことばかりではなく、仕事がない間に音楽制作に朝8時から夕方まで没頭し、そのお陰で最近音楽レーベルと契約し、アルバムを1枚リリースしました。
今後のコンサート活動は「フランスよりイギリスの方が状況が良く6月21日から解禁になる」と、国外へ目を向けています。
カメラマンのマキシム、バイトはやらない
カメラマンで個人事業主のマキシム(Maxime、49歳)も徐々に「注文が減り、入っていた撮影の仕事もキャンセルになった」と昨年のロックダウン当時を振り返り、「仕事が入らなくなると創造性も失われて行くような気がした」と語っています。
親には「することがないんだからなりふり構わず仕事をすべき」と何度も言われましたが、バイトをしてしまうともう本業のカメラマンに戻れない気がして未だに何もしていません。
「そもそもこの歳で何をやればいいんでしょうか?食料品店で働く?」
炭素コンサルタントに転身
イベント業界にいたジュディット(Judith)は炭素(CO2)コンサルタントに転身し、主に自治体向けに炭素排出をいかに減らすかのアドバイスをしています。
「今後もコロナのような問題が起こりうることを考えると、不安定な業界から今後需要のある職業につこうと思いました」とまだ一般的に知られていない職業についた動機を語っています。
さらに「イベント業界では夜も週末も働くことが多かったのですが、休業してみて7歳と11歳の2人の子供たちと過ごす時間が増え、元の生活に戻りたくないと思った」と、休業で再発見した生活スタイルが彼女の職業観に大きく影響を及ぼしたことがうかがわれます。
執筆:マダム・カトウ