1月5日(火)、世界各国で新型コロナワクチン接種が急がれる中、フランスでも昨年12月27日にワクチンの接種が開始されましたが、接種数の少なさに政府は非難を浴びています。これを受けヴェラン(Olivier Véran)保険相は今月6日より接種数を大幅に増やすと発表しました。
開始5日間でたったの516人、4日現在5,000人
1月4日に公表されたフランスのワクチン接種数は累計でわずか516人、これは人口の0.001%にも満たないことが明らかになり、各方面で衝撃が走りました。
この日の記者会見でヴェラン大臣は「本日(4日)数千人への接種が行われている。その数字が集計されていないだけだ」と反論しています。
その後の集計で、確かに1月4日時点で5,000人が接種を受けたことが公表されていますが、これは当初目標の1日15,000人を大幅に下回っている上、世界のワクチン接種人数ランキングで現在フランスは32位に位置しています。
政府は2月末までに100万人の目標を掲げており、今後接種ペースを上げることが必須となります。
ちなみに12月中旬より急速に感染が再拡大した隣国ドイツでは、今月2日の時点ですでに265,000人、イタリアでも3日の時点で114,000人が接種を受けています。1日の感染者が5万人を超え現在ロックダウン中のイギリスでは、すでに100万人近くが1回目の接種を受けています。
《フランス流》で他国に遅れ、承諾書面や事前診断
まず、フランスは欧州では唯一ワクチン接種への承諾書と医師による事前診断を義務付けています。また、接種が開始されたのが年末年始の休暇時期だったこともあり、これらの事前準備に最大で約5日を要するなど、スピーディな接種の妨げになっています。
ドイツではワクチンを保管するための巨大な冷蔵庫を準備し、大規模なワクチン接種センターを用意して接種を行っていますが、フランスはワクチンの保管を医療機関に限定するなど小規模で行っています。
現在、最優先である医療介護施設での接種が開始されていますが、入居者の移動を避けるため接種は各施設の医療スタッフが担当しています。
このやり方の最大の欠点は、接種されるファイザー・バイオNテックのワクチンの保管に必要な摂氏マイナス80度の特殊な冷蔵庫が施設ごとに必要になることです。加えて、医療介護施設によっては「事前診療の資格を持っている医師が常駐していない」といった新たな問題も発生しています。
接種が遅々として進まないことで野党や一部の医師から非難の声が上がっていますが、一方でワクチンに懐疑的なフランス国民の信頼を得る必要もあることから、ヴェラン保健相は「大規模接種を行わない選択をしたことに責任を持つ」と断言し、また「急ぐのと慌てるのは別問題」と慎重な姿勢を貫いています。
ワクチンの供給予定通り、21日後に2回目
現時点で19,500個のワクチンがフランスに到着していますが、今後毎週50万人分のワクチンが供給されるため、2月末で接種を受けた最優先の100万人は、製造元の推奨通り21日後に2回目の接種を受けることができます。
但し、春頃から予定されている一般人への接種が開始されると、現在ドイツが直面しているワクチンの供給不足がフランスでも発生する可能性があると危惧されています。
現在すでにアメリカで接種が始まっている米モデルナ社のワクチンがEUで承認されるかどうかは、明日6日に発表されます。
フランスのワクチン接種状況の数字を公表するサイト:Vaccin Tracker
執筆:マダム・カトウ