3月6日(水)経済・財務省(Ministère de l’Économie et des Finances)は、予定されていた法人税の減税措置の実行に関する決定を今年春まで据え置く旨を発表しました。
フランスの法人税
フランスにおいて法人税(l’impôt sur les sociétés:IS)は、収益規模の大きい企業に対して以下のように課されています。
売上(les chiffres d’affaires)が763万ユーロ(9億6300万円/1ユーロ=126円で換算)以上の大企業に対する法人税
・収益(les bénéfices)が50万ユーロ(約6314万円)以上の企業・・・33.3%
・収益が50万ユーロ未満の企業・・・28%
EU加盟国の平均課税率は25.6%ですから、フランスの法人税率は高いと以前から指摘されていました。
ちなみに、中小企業(売上が763万ユーロ未満の企業)に対する法人税は以下のように軽減税率が適用されます。
・収益が3万8210ユーロ(約481万円)未満の中小企業・・・15%
・収益が3万8210ユーロ以上、7万5000ユーロ(約945万円)未満の中小企業・・・28%
・収益が7万5000ユーロ以上の中小企業・・・33.3%
収益が3万8210ユーロ未満でもともと法人税が低い中小企業は、今回の引き下げ措置の対象にはなっていません。
オランド政権時代から
海外からの投資を呼び込むため、法人税の引き下げは既にフランソワ・オランド前大統領(François Hollande)が提案していた措置です。
これをマクロン政権も引継ぎ、エドゥアール・フィリップ首相(Édouard Philippe, Premier ministre)が
2018年2月1日の法案を発表しています。
この法案においては、収益が50万ユーロ以上の大企業に対する法人税33.3%が2019年に31%、2020年に28%、2021年に26.5%、そして2022年に25%と段階的に引き下げられる予定でした。
減税はいったん据え置き
しかしブリュノ・ル・メール経済・財務大臣(Bruno Le Maire, Ministre de l’Économie et des Finances)は3月6日、現在のところ大企業に対する減税を見送ることを発表したのです。
ル・メール大臣は、マクロン政権中(すなわち2022年まで)に25%まで引き下げの実現は強調しながらも、段階的な減税のスピードを見直す意向を示しています。
当初の狙いは
今回の減税は、第一に国民の購買力(le pouvoir d’achat)を上げることを目的としていました。
2013年からフランス政府は、企業の競争力を強化するために「競争力・雇用税額控除(Crédit d’impôt pour la compétitivité et l’emploi:CICE =企業が従業員に支払う賃金の一部を法人税から控除できる制度)」を導入するなど、法人の負担軽減に向けた取り組みを行っています。
多国籍企業に影響か
減税の据え置きは、特に収益の高いGAFA(米のグーグルGoogle、アップルApple、フェイスブックFacebook、アマゾンAmazonの4社)に対して影響が出そうです。
政府は少なくとも今年の4月には再び、減税に向けた議論を開始すると発表しています。もはや国内企業だけでなく多国籍企業が対象となる税制改革ですが、仏政府がどのように取り組んでいくのか、今後注目すべき点です。
執筆あお