フランスに来てから語学学校に1年ほど通っていました。クラスにはいろいろな国籍の生徒がいましたが、彼らのよく話すことといったら。うまく話せなくても、間違っていてもお構いなし。自分の言いたいことをはっきり主張します。
ついつい圧倒されてしまう日本人ですが、文法の授業となったとたん活躍が目立つのが面白いところ。これだけ基本的なことが分かっているなら、他のクラスメートと互角に渡り合えるはずなのに…
受けてきた教育方法や文化の違いもあるのでしょうが、フランス語を話せるようになるには、まずは話すことに慣れていくのが大切です。
伝えたいという気持ち
フランス人のお宅に始めて招かれたときは、誰もがみな気を使ってゆっくり話しかけてくれました。「兄弟はいるの?」「フランス料理は好き?」「日本が恋しくない?」。
でもそれも最初の5分ほど。おしゃべり好きなフランス人は、他に話題を見つけるとものすごいスピードで(彼らにとっては普通のスピードなのでしょうが)話し始めます。そのあとは当然のごとく会話についていくことができません。
黙って聞いていると、とつぜん話が振られてあたふたする羽目に。みんなに注目されるなか、うまく言葉が出ずに何度恥ずかしい思いをしたことでしょう。それでもなんとか答えよう、言いたいことを伝えよう、と口を開くと…みな一生懸命聞いてくれます。そしてそこから話も広がっていきました。
コミュニケーションにおいて一番大切なことは、「伝えたい」という意思です。必ずしも正確な文で話す必要はありません。伝えたいという気持ちがあれば、相手はきちんと耳を傾けてくれます。何かを聞かれて「Oui」「 Non」だけ答えるのではなく、そのあとにもう少し文をつなげてみましょう。何かを言い足してもいいですし、相手に質問しても構いません。
話すことを楽しんでいると相手に分かってもらえれば、会話も続いていきます。「うまく話せないから、話さない」と黙ってしまうのはもったいない。実は「話さないから、話せない」だけだったりするのです。
シンプルに話す
フランス語を話すときにもうひとつ重要なのは「表現力」です。ここでいう表現力とは、いかにシンプルに自分の知っている単語を使って、言いたいことを伝えられるか、ということです。
日本語をフランス語に置き換える癖がついてしまうと、日本語の難しい単語にとらわれてしまい、その言葉に対するフランス語を探そうと必死になってしまいます。頭の中で思い出せない単語を探して、沈黙してしまった経験はありませんか?そういう時は、伝えたいことを自分の知っているほかの単語や表現で言い換えればいいのです。
たとえば「昨日の嵐はすごかったね」と言いたいのに、「嵐」という言葉が分からない!そういうときは「昨日、雨と風がすごかった」と表現しても、言いたいことは伝わります。話していくうちに「l’orage」という単語が会話に出てくるかもしれません。
小さな子供と話すとき、大人はなるべく簡単な言葉や表現を選びます。そのことを思い出しながら、難しい言葉をほかの言葉で言い換えて、伝えたいことを表現していきましょう。
間違えても気にしない
フランス語を話すたびに恥ずかしい思いをしたり、がっかりしたり。でもそんな気持ちも、上達にはかかせないもの。そう割り切って、どんどん話していくことが大切です。
少しぐらい間違えても大丈夫。相手は案外なにも感じていないものです。だって、私たちはフランス語が母国語ではないのですから!逆の立場になって考えてみましょう。外国の方が、一生懸命何かを日本語で伝えようとしていたら、間違いなど気にならず、まずは理解してあげたいって思うはず。
話した分だけ上達します
「私はあなたと話したい」という態度を示し、恐れずに口を開いてみましょう。話せば話した分だけ力はついていきますし、だんだんと話すことに慣れていくものです。
執筆 SAWA