「Est-ce que Michael Jackson est français ?」
「Non, il n’est pas français. Il est américain.」
その昔、初めて出会ったフランス語の文章です。何度も繰り返し唱えたからなのか、それとも知ってる人物が出てきてイメージとして覚えられたからなのか。不思議とはっきり記憶に残っています。残念ながら、実際の会話で同じ文を口にする機会には恵まれませんでしたが、「祖父が○○人で…」と話題になることもあり、暗記した文には助けられました。
フランス語の学習を始めたばかりの頃は、覚えることが多くて大変です。でも学んだら学んだ分だけ上達するのもこの時期。フランス語学習の出発時点で、やるべきことを確認していきましょう。
入門・初心者はインプット重視
「さぁ、今日からスペイン語で話しましょう」と突然言われても、知識がなければ無理な話。語学は、インプットなしにアウトプットはできません。言葉が分からなくても、現地に行ってしまえばどうにかなると言われることもありますが、それは現地で大量の言葉をインプットできるからに他なりません。
学び始めのこの時期は、知識をため込むことが大切です。「文法・語彙・聞く・読む」といった、インプット中心の学習を行っていきましょう(フランス語を「聞く」ことと「読む」ことについては、以前の記事を参考になさってください)。⇒「フランス語が聞きとれる「耳」のつくり方」「長い文章でもこわくない!フランス語を読むコツ」
会話から文法を学ぶ
文法がよく分からなくても、簡単なフランス語なら話すことはできます。でも基本的な文法を理解していないと、ある時期を境にパタっと上達がとまってしまうもの。特に大人になってからフランス語を始めるのであれば、初めに文法をきちっと押さえておくと、その後の学習が楽になります。
ノートにまとめる
文法は、状況を想像しやすい会話形式の文脈から学ぶのがおすすめです。セリフの中の基本的な文法に注目し、そこから発展させていく。たとえば、冒頭で紹介した文章では「Il est」というêtre の使い方、そして「Il n’est pas」というその否定形が、新しい文法事項にあたります。
一冊ノートを用意して、学んだ文法を手書きでまとめていきましょう。主語を「Je」や「Nous」に換えた場合はどうなるか、また「Elle」が主語のときは「français」が「française」になることなども、同時に書き込んでいきます。手を使って書くと忘れにくくなりますし、自分の字だと見返すときにも分かりやすいものです。
丸暗記はしない
車の運転を覚える場合、ブレーキやギアの仕組みをそのまま暗記しただけでは、実際に動かすことはできません。知識をもとに練習を繰り返すことで、運転できるようになっていくものです。
文法も車の運転と同じです。丸暗記しても使えるようにはなりません。文法という知識をもとに、話したり聞いたりといった練習を繰り返すことで、使いこなせるようになります。文法を独立したひとつの学習として捉えるのではなく、その知識が実際の会話にどう活かされるのか確認しながら学んでいくと、実践に役立ちます。
単語は冠詞と一緒に
フランスの子供たちは、「冠詞と単語」をセットにして新しい言葉を覚えていきます。いつも持ち歩いているぬいぐるみは「un doudou」、犬を見れば「un chien」。男性名詞だから「un」、女性名詞だから「une」などと考えずに、車は「une voiture」と覚えているので、話すときにも迷いません。私たちもこの方法をぜひ取り入れましょう。
単語帳の作成
自分だけのオリジナルの単語帳を作っていきます。知らない単語に出会ったら、男性名詞と女性名詞、それぞれ色分けして冠詞と一緒にノートに書いていきましょう。何度も見直すと、色と一緒に記憶されるので、頭に残りやすくなります。
声にだして覚える
意味を調べてノートに書いたら、音読します。冠詞と名詞をセットにして、発音しながら覚えていきましょう。音で覚えておくと、冠詞を言い間違えたときに自分で「あれ?」と感じるはず。実際に話すときも、頭で考えることなしに、冠詞と共に単語が口から出てくるようになります。
インプットからアウトプットへ
学び始めはインプット中心の学習となりますが、文法や単語を声にだしながら覚えることは、「話す・書く」といったアウトプットへ繋がります。基本的な文法を理解し、語彙も増えてきた。簡単なフランス語だったら聞いて理解できる。ここまで来たら、自分の中に蓄積された知識を外に出していく時期に突入です。次回は、この先の学習法についてお話しします。
執筆 SAWA