「フランス語は覚えることが多すぎる!」と、学び始めた頃よく嘆いていました。特に苦手だったのが、名詞の性別と動詞の活用。こんなに複雑な言葉を、フランス人はどうして苦も無く使いこなせるんだろうと不思議に思ったものです。
小さな子供たちは、家族やまわりの人たちが話している言葉を聞いて、少しずつ言葉を覚えていきます。自分の欲求を表現できる程度だった言語能力は、幼稚園そして小学校での学習を通して、日本のフランス語学習者の中級者レベルまで上がります。
フランスの子供たちは、どうやってフランス語を学んでいくのでしょうか。外国語としてフランス語を学ぶ私たちに、なにか活用できる方法はないのか探ってみましょう。
小学校で始めに習うこと
アルファベの読み方と書き方は幼稚園で習います。語学としてのフランス語の授業は、日本の1年生にあたる学年 CPから開始。「フランス語」という科目はなく、「conjugaison(動詞の活用)」「grammaire(文法)」「orthographe(つづり)」「vocabulaire(語彙)」「poésie(詩)」「lecture(読解)」と細かく分けられ、毎日2時間以上がこれらフランス語の学習に充てられます。
CP の1年を通して特に力が入れられるのが「orthographe」。学年終了時までに、ある程度の長さの文章を読めるようにするのが目標です。
orthograph -つづりと発音の規則
フランス語は、アルファベが読めても文は読めるようになりません。そのためつづりと発音の基本的な規則について、小学校で徹底的に学びます。
毎時間、新しいアルファベに焦点をあて、その文字を含んだ単語を学んでいきます。たとえば「a」だったら、「arbre」「chat」「plage」など。そのうち「ai」とアルファベが続くと「エ」と読むこと、また同じ「エ」でも「ei」と書く場合もあることを学んでいきます。
毎日の宿題として出されるのは、たとえば「ai」「ei」を習った日は、この文字列を使った単語を見つけノートに書いてくること。そして「Un aigle cherche depuis une semaine un animal à manger : il a très faim.」といった、覚えたつづり字が入った文を暗記し、文字を見ながら読めるように練習します。
このつづりと発音の関係をしっかり学べば、意味は分からなくても長い文章を声にだして読めるようになります。この学習は小学校の最終学年になるまで続きます。
poésie – 詩の暗唱
低学年のうちから毎週行われるのが「poésie(詩)」の授業。学校で一通り意味を確認したあと、その詩をイメージした絵を描くこと、そして詩を暗唱することが宿題として出されます。発表当日はひとりずつ教室の前に立ち、他のクラスメートを前に覚えてきた詩を披露。一語一句覚えるだけでなく、感情を込め、抑揚をつけて暗唱しなければいけません。無事に終わると先生がその場で点数をつけます。
高学年ともなると「いくらなんでも子供には難しすぎるだろう」と思える詩も登場します。シャルル・ボードレールやヴィクトル・ユーゴーなどの有名な詩人の作品から、17世紀の古い作品まで。ジャン・ドゥ・ラ・フォンテーヌの「la cigale et la fourmi(ありとキリギリス)」を丸々覚える宿題もありました。
「poésie(詩)」の授業の目的は、子供たちが詩的な表現に慣れ、新しい表現を自ら使えるようになること。またリズムにのってイメージを描きながら、新しい言葉を覚える大切さを学ぶことだそうです。
利点の多い詩の暗唱ですが実際には覚えるのがとても大変で、子供たちはみな必死。その甲斐あってか、普段の会話にとつぜん詩の一部が出てきたリ、何かをきっかけに詩の暗唱が始まったりもします。やはり懸命に暗記したものは忘れづらいものなのですね。
基本を見直す
大人になってからフランス語の勉強を始めると、綴りと発音についてさっと目を通しておしまいとなりがちです。しかしフランス人のフランス語の学び方をみて分かるのは、綴りと発音の規則をしっかり理解することが重要だということ。フランス語は覚えてしまえば、例外はあまりありません。単語や文章をきちんとした発音で読めれば、単語も覚えやすくなりますし、読むスピードも上がります。
また、詩の授業に見られる暗記も、語学学習において大切な一要素です。詩に限らず、気にいった文章や例文などを暗記すれば、表現を広げるのに役立ちます。
もう一度基本を見直すことで、フランス語をより深く理解できるようになるに違いありません。
執筆 SAWA