日本からアニメのDVDが届いて子供たちは大喜びしています。家の片づけをしながら私も横目でちらちらと見ていましたが、どうやら「デジャブ現象」がテーマだった様子。「ねぇ、デジャブって知ってる?」と聞いてみると、子供たちは知らないとの答え。そこで「déjà-vu」と書いてみせると、二人は「あ~!」と納得。どうやら「デジャブ」の「ブ」の発音のせいで、分からなかったようです。
この「v」の発音は、なかなか厄介です。私からしてみれば「b」も「v」も少しぐらい発音が違っていても分かるような気もしますが、子供たちに言わせれば「全然違う!」とのこと。「だからママにはディクテの練習を頼まないんだよ」とはっきり言われてしまいました。私なりに区別して発音しているつもりなんですが…。
今回はこの「déjà-vu」という言葉に使われている「déjà」についてお話ししていきましょう。
これまでに
「déjà-vu(déjà vuでも可)」は「déjà」(以前に、これまでに)と「voir」(見る)の過去分詞「vu」がくっついてできた語です。「J’ai déjà vu cette personne.」(この人とこれまでに会ったことがある)という文から分かるとおり、「以前に会った、これまでに見た」という意味を持ちます。初めて訪れた場所なのに、来たことがあるような感じがする“既視体験”を表す用語ですが、どこにでもあるような新鮮味に欠けるものに対して「C’est du déjà-vu.」と言うこともできます。
例文で「déjà」の使い方を確認してみましょう。
Je suis déjà allé(e) à Paris.(私はパリに行ったことがある)
Je te l’ai déjà dit.(前にも言ったよね)
また「déjà」は「もう」や「すでに」という意味でも使われます。
Tu as déjà fini ton travail ?(もう仕事は終わったの?)
Il est déjà midi.(すでに正午だ)
ええと…
子供が小さいとき、公園に行くと少し大きな子供たちがワ~っと寄ってきて一緒に遊んでくれました。日本人が珍しかったのかもしれませんが、いろいろと話しかけてくれたのでフランス語の勉強になったものです。
「Elle s’appelle comment, déjà ?」ある日、女の子にこう聞かれました。「déjà」という単語に一瞬「?」となりましたが、きっと名前を聞いているのだろうと思い答えると、女の子はにこっと笑い娘の名を呼んで遊び始めました。
家に帰ってから早速「déjà」を辞書で調べてみると、「忘れてしまったことを聞き直すときに使う」と書いてあります。つまり「Elle s’appelle comment, déjà ?」は「彼女の名前はなんだっけ?」という意味。その女の子は娘の名前を聞いたことがあったけど、忘れてしまっていたわけです。
この「déjà」の用法を使った文は日常よく耳にします。普通の質問文の最後に「déjà」を付けるだけでいいので簡単。物覚えの悪い私にとっては欠かせない表現です。
Comment dit-on ça, déjà ?(これなんて言うのだっけ?)
On va partir à quelle heure, déjà ?(何時に出発するんだっけ?)
もう?
「Déjà ?」と一言で「もう?」と尋ねることもできます。「さてと、そろそろ行かなくっちゃ」と帰ろうとする友達に「Déjà ?」(もう?)。「来週の文の課題を全部終わらせたよ」と自慢げに語られたら「Déjà ?」(えっ、もう?)。
Bon, c’est déjà l’heure de se quitter. À la prochaine !
執筆 SAWA