フランス人の赤ちゃんが初めて口にする言葉は「papa」「maman」そして「dodo」などだそうです。日本でも「パパ」「ママ」「まんま」などが初めての言葉として挙げられます。どちらの言語でも、同じ音が続いて発音しやすいものが選ばれているところが興味深いですね。
子供は成長するにつれ、だんだんと自分の欲求を言葉で表すようになっていきます。フランスの子供たちがよく口にするのは「regarde」や「encore」。公園の滑り台のてっぺんに立って「Maman, regarde !」(ママ、見てて!)と言いながら嬉しそうに滑り下りたり、「さぁもう帰るよ」と声をかければ「Encore !」(まだ!もっと)と駄々をこねたり。
「encore」はもちろん子供だけでなく大人もよく使う、会話に欠かせない言葉のひとつです。今回は、日本でも「アンコール!」と耳にすることがあるこの単語「encore」についてお話ししていきましょう。
もっと
子供の誕生日会ともなると、ケーキの時間は大騒ぎです。飲み物をコップについで、ケーキをとりわけて。「Joyeux anniversaire」 を歌ってローソクを吹き消したら、やっと「Bon appétit !」の声がかかります。ケーキを頬張っている間は一瞬しずかになりますが、その後あちこちから色々な声が聞こえてきます。
「Encore un gâteau, s’il te plaît ?」(ケーキをもう少しちょうだい)
「Je pourrais encore avoir du jus de fruit, s’il te plaît ?」(ジュースをもう少しもらえますか?)
もちろん、「Vous en voulez encore ?」(おかわりは?)と聞くのも忘れてはいけません。
このように「encore」は「もっと」を表す便利な言葉。小さな子供がすぐに覚えるのも納得がいきます。
まだ
誕生日ケーキを食べ終わり、プレゼントを開けたら一段落です。子供たちは庭に出て遊びはじめ、親はほっと一息。と思いきや窓をコンコンたたく音がします。
「Est-ce qu’il y a encore du jus ?」(ジュースはまだ残ってる?)
外で遊んで喉が渇いてしまったようです。コップとジュースを外に出し、好きに飲んでもらうことにしました。
「encore」には、このように「まだ」という意味もあります。学校に行く時間なのに、まだ部屋で準備をしている子供に向かって「Tu es encore là ? Dépêche-toi !」(まだいるの?早くしなさい)などと言う時にも使えます。
また否定形にすると「まだ~ない」と言い表すことができます。
「Je ne l’ai pas encore décidé.」(まだ決めてないんだ)
「Tu as déjà pris le déjeuner ?」(お昼ごはんはもう食べた?)
「Pas encore.」(ううん、まだ)
レストランで「Vous avez choisi ?」または「Avez-vous décidé ?」(お決まりですか?)と聞かれたときにも、「Non, pas encore.」(いいえ、まだです)と答えれば、しばらくたった後にまた注文を取りに来てくれます。
もう一度
コンサートなどで耳にする「アンコール」という言葉は、もともとフランス語の「encore」から来ています(ちなみにフランスでは「アンコール」の代わりに「Bis !」と言います)。
「encore une fois」で「もう一度」という意味。うまく聞き取れなかったときなどは「Pourriez-vous le répéter encore une fois, s’il vous plaît ?」(もう一度繰り返していただけませんか?)と言いましょう。
思わずつぶやく時にも…
ここのところ雨が続いて、洗濯ものもなかなか乾きません。明日も雨の予報…。「Encore !」(またぁ?)と思わずつぶやいてしまいました。早く天気になりますように。
執筆 SAWA