フランス語を始めたばかりの人に、フランス語に興味を持った理由をたずねると、
「発音が美しい言葉だから」
と言う答えがよく聞かれます。「フランス」という文字を見るだけでも料理やアート、ファッションなど文化的な香りがしてきます。そしてフランス語のささやくような、ほわんとした音が耳から入ってくるとなんだかうっとりして、こんな音を自分の口から発してみたいと思うのではないでしょうか。
学校や仕事場、家庭でフランス語を話すようになって35年になります。その中から学んだ簡単にフランス語っぽく発音できるいくつかの clés(鍵、手がかり)をご紹介しましょう。
この人みたいなフランス語を話したい!というフランス人を見つける
まずはこの人のフランス語が好き!と言う人を見つけましょう。「あの人のように話したい」という気持ちは学習の原動力になります。めざす最終形が決まっていればモチベーションがあがります。
フランス人とひとくくりに言っても話し方は千差万別です。自分と同年代の(もちろんそれ以外の年齢の方でも)フランスの有名人の中から好きな人を見つけてみましょう。
映画やドラマ等を観て、言っている事は分からなくても話しているフランス語の音やリズムが素敵だなと思う人を憧れの人としてマークします。
例えば40〜50代の女優さんの中から選ぶとしましょう。可愛らしさも残した落ち着いた大人の女性が好きな人は ジュリエット・ビノッシュ (Juliette Binoche)。チャキチャキの早口パリジェンヌが好きな人はドラマ「エージェント物語(仏題:Dix pour cent)」で有名になった カミーユ・コタン (Camille Cottin)。ゆっくりとセクシーにささやくような話し方がお好きなら元フランス大統領夫人 カーラ・ブルーニ (Carla Bruni)。
憧れの人がフランス語を話している様子を映画、ドラマ、YouTubeなどで観てイメージトレーニングしましょう。
ささやく音は「静かに。シ〜!」
「フランス語は優しくささやいているようだ」と感じる大きな要因の一つは、文章に頻繁に出てくる ch や j の音がとても柔らかで心地良いからではないでしょうか。フランス語を始めたばかりのころは綴りを見ると、頭でカタカナに変換してしまいがちです。
例えば chat「シャ」をカタカナ発音すると、言い終わったときに口を左右に引っ張った状態になっていて鋭い音がでるはずです。フランス語っぽくするためには「シャ」の前に「静かに!」と言うときの声をださない「シ〜」の音を口を小さく開けて発音し、そのまま少し口を開けて「シャ」にするとフランス語の雰囲気がでます。
鼻母音が大切
これをマスターすれば途端にフランス語らしくなるのが鼻母音です。その中で特に外国人にとって難しいと感じるのは an や en の綴りの鼻母音[ɑ̃]です。
[ɑ̃]は「あ」と口を開けておいて「おん」と言うとかなり近い音になります。歯医者さんで器具を口に入れられたまま「うん」と言おうとするときも同じような音がだせます。練習あるのみですが、繰り返しているうちに言えるようになります。何回も Jean (男性の名前)と言ってみてください。J が最初の文字なので「シ〜」の口のから「ジャン」と発音してくださいね。
今のところは英語を忘れる
英語が上手な人ほど、アルファベットを見ると英語の発音が自然にでてしまい、フランス語らしい発音の邪魔になることがあります。
例えば Je t’aime はカタカナでお馴染みの「ジュテーム」がフランス語の発音に近いのですが、英語読みで「ジュテイム」となってしまう英語話者は少なくないようです。
予備知識のない真っさらな気持ちでフランス語に向き合いましょう。でも英語が得意なことは無駄ではありません。中級以上のレベルになって語彙が難しくなってくるとその英語力が助けになります。
今日のphrase
Mon chat aime Jean. (私の猫はジャンが好き)
フランス語っぽく言えましたか?
今すぐフランス語っぽく発音するためのいくつかのキーポイントをご紹介しました。これらをマスターしたあとには、フランス語発音の「ラスボス」であるRの発音に挑戦しなければなりません。Rが攻略できればこわいものなしですが、強敵ですので焦らず時間をかけて練習しましょう。
ペレ信子