2023年9月22日(金)、来仏中のイギリス国王チャールズ3世とカミラ夫人を歓迎するベルサイユ宮殿晩餐会が20日(水)に行われ、その豪華なメニューが話題になりました。料理を担当したのは、フランスが誇るミシュラン三ツ星シェフ、アンヌ=ソフィー・ピック(Anne-Sophie Pic)とヤニック・アレノ(Yannick Alléno)の2人、デザートは世界的に有名なパティシエ、ピエール・エルメ(Pierre Hermé)です。世界最高峰の女性シェフ、ピックが二ヶ月に及んだ準備の様子について語っています。
白アスパラから青いオマール海老に変更
前菜を担当したアンヌ=ソフィー・ピックは、当初白アスパラガスを検討していましたが、当初春に予定されていた王の来訪が年金改革反対の激しいデモのため秋に変更され、アスパラは今の時期旬でないことから素材を変更することになりました。
メニューの最終承認を行うバッキンガム宮殿と数回のやり取りの末、希少なブルターニュ産オマールブルー(homard bleu)とイチョウガニ(tourteau)に、ドローム(Drôme)県産メロンのブリュノワーズ(サイの目切り)と生アーモンドを添えたシンプルなメニューになりました。
ちなみにオマールブルーの一般販売価格は、1キロあたり約100ユーロ(約15,700円/1ユーロ=157円)ほどです。
メインはヤニック・アレノの「ブレス県(Bourg-en-Bresse)のチキン(volaille de Bresse)」、デザートはイギリス国花であるバラを象徴したピエール・エルメの「ローズ風味のマカロン(macaron à la rose)」でした。
「50年に1回しか巡ってこない、名誉あるイベント」
7月からこの日のために準備したという世界最高峰の女性シェフは、まず晩餐会の会場である宮殿の「鏡の間(galerie des Glaces)」に向かいました。会場の雰囲気を感じることも目的の一つですが、料理の盛り付けをする場所からテーブルまでの距離と料理を運ぶために要する時間を測るためです。
ディナーが行われるテーブルは全長62メートルもあり、ここに150人の招待客が着席します。
つまり、テーブルに運ばれる間に崩れたりするような繊細すぎる料理は避けるべきだということになります。シェフはさらに作った料理がテーブルに運ばれた後、5分、10分、15分経過した場合どのように変化するかを綿密に測りました。
リスクを避けつつ、旬な食材
こういったことを考慮した結果、「温かい料理よりもリスクが低いから」とシェフは前菜をコールドディッシュにすることに決めましたが、これに関してはバッキンガム宮殿からはなんの注文もなかったようです。
チャールズ3世もカミラ夫人もフードアレルギーは一切ないため、食材のメインに甲殻類を選びました。実はあまり知られていませんが、今がオマール海老やカニの旬、年間で一番美味しい時期だとか。
「一般的に甲殻類は冬がシーズンだと思い込まれていますが、実は今の時期が最高なんです」とコメントしています。「是非自分の出身地の旬な農産物を味わって欲しかった」というシェフは、付け合わせに出身地の農産物を検討します。
ルイ14世の菜園とシェフの出身地へのオマージュ
晩餐会の会場、ベルサイユ宮殿には「王の菜園」と呼ばれる畑がありますが、ここでルイ14世はお抱え農園家ジャンバティスト・ドゥ・ラ・カンティニ(Jean-Baptiste de La Quintinie)にメロンを作らせていたことがわかっています。
これを知ったシェフは、ベルサイユ宮殿という場所と食事との関連性という意味で最高のアイデアだと、自らの出身地の産物でもあるメロンを選びます。
「私にとって出身地のドローム県(Drôme)の一部をここに連れてくることはとても重要なのです」と語っています。
Assiettes au millimètre. Le dîner royal se prépare dans la galerie des glaces du château de Versailles en l’honneur du roi Charles III, mise en place, repassage des nappes @franceinfo pic.twitter.com/Ql70bWiTTy
— Victoria Koussa (@victoriakoussa) September 20, 2023
母、故エリザベス女王、ベルサイユ宮殿に2回招待
イギリス国王を迎えるディナーはベルサイユ宮殿の鏡の間で行われ、テーブルには美しいセーブル焼きの器が並べられています。
この同じ場所でチャールズ3世の母エリザベス2世は、1957年に昼食会、1972年に晩餐会と2回招待されています。
フランス大統領府、エリゼ宮(l’Elysée)の説明によると、王は「亡き母の足跡をたどることに敏感」だということで、今回ベルサイユ宮殿を選んだようです。
執筆:マダム・カトウ