パリ、モンパルナスタワー50周年、「エコ」な次世代の多目的ビルに改築へ 

2023.06.16

モンパルナスタワー50周年、改築へ

2023年6月16日(金)、パリのランドマークの一つ、モンパルナスタワー(La Tour Montparnasse)が築50周年を迎えます。1973年6月18日にオープンし、全長210m、59階建てのこのビルは、パリで2番目に高層な建物で、パリ市内が360度見渡せるパノラマ展望台は観光客にも親しまれています。現在オフィスビルとして稼働するモンパルナスタワーは、2025年以降4年間の改装に入り、CO2排出を削減したより「エコ」な多目的ビルとして再オープンする予定です。

 

1950年代のパリ都市計画、近代化の象徴も「高層」に非難轟々

1950年代後半、モンパルナス地区を整備する必要性から、モンパルナス駅(Gare Montparnasse) を移転し、周辺の道路を整備する計画が浮上しました。

当時、この地区の一部の道路は非衛生的で、しかもこの区域にある数千の住宅は老朽化が深刻だったのでこの機会に取り壊されることになりました。

1958年、こうして空いた8ヘクタールの敷地に高層ビルを建てる構想が練られましたが、全長200メートル(増築後、現在210m)のビルは「景観が損なわれる」など非難轟々で、計画は遅々として進みませんでした。

「黒い未亡人」10年がかりでようやく着工へ

それから10年後、1968年に当時の文化相アンドレ・マルロー(André Malraux)が建築許可をだしました。

69年に大統領となったジョルジュ・ポンピドゥー(Georges Pompidou)は、パリ市の近代化とアメリカ的ショッピングセンターの建設を希望していたこともあり、同年ようやく着工することが決まりました。

4年後の73年6月18日にオープンしたパリで最も高いビルは、コンクリートで作られガラス張りという当時としては斬新なスタイルですが、パリ市民の反応は様々で«近代化の導き手(灯台) (phare de la modernité )»と呼ばれる一方、«黒い未亡人(veuve noire)»など批判的なあだ名もつけられています。

オフィス不足解消目的、現在も入居率9割

高層ビルが建設されたのは当時のオフィスビル不足を解消する必要があったためですが、オフィス需要が低迷する現在も、モンパルナスタワーのオフィス入居率は90%と高く、百数十社が入居しています。

 

50歳の「お嬢さん」、28年にリニューアルオープン「多目的ビル」に

2016年、築後40年以上が経ったモンパルナスタワーの改築案を募集する国際コンクールが行われました。

ビルを今の時代に沿った必要性に合わせることもさることながら、特にエネルギー効率をあげることが最重要課題となっています。

世界中の建築家や建築事務所など700件の応募の中から、7つの建築事務所の案が一次選考を通過、最終選考でパリの3つの建築事務所がこのプロジェクトのために合同で作った「ヌーヴェルAOM」Nouvelle AOM (Nouvelle agence pour l’opération Maine-Montparnasse) 社が採用されました。

リニューアル後、ビルにはオフィスの他、ホテル、レストランやイベント会場などが入り、24時間営業の多目的ビルとなります。

また1日に入館できる人数も現在の6,000人から12,000人と倍になることが予定されています。

 

黒いビルは「グリーン」に変身、太陽発電と緑化でCO2削減

改築工事は4年間行われ、実際に閉館となるのは24年以降ですが、すでに準備は進められています。

CO2排出を抑え、温暖化に対応するためタワー周辺の全体を緑化すべく、約1万平米に2000本の木が植えられます。

モンパルナスタワー自体には空中庭園が設けられ、太陽発電パネルが設置されます。これにより、タワー全体のエネルギー消費量が現在の50%に抑えられることになります。

執筆:マダム・カトウ

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