2023年6月9日(金)、フランスの朝食といえばクロワッサン(croissant)が思い浮かびます。クロワッサンはフランス中のパン屋で必ず売られている伝統的なパンですが、近年パン職人たちが「クリエイティブ」なクロワッサンを作り出して腕を競い合っています。
カラフルなトッピングで伝統のパンに新風
フランスのパン屋ではざっくりと分けて、バゲットなど「食事の時に食べるパン」と、クロワッサンなどの「ヴィエノワズリー」(viennoiserie)と呼ばれる、朝食や間食として食べる「菓子パン」の2種類が売られています。
このヴィエノワズリーの代表格はクロワッサンとパン・オ・ショコラ(pain au chocolat)と呼ばれる、中に棒状のチョコレートが挟み込んであるものとパン・オ・レザン(pain aux raisins)と呼ばれる、レーズンを挟み込んでカタツムリ状にして焼いたものの3種類で、フランス中どこに行ってもパン屋では必ず売られています。
長い間、この「3つのパン」はどこでもほぼ同じ材料で作られ、同じ形状をして、なんのバリエーションもありませんでした。フランスでは長いことどのパン屋でも同じようなパンが売られていました。
ところが、ここ2-3年、パリのパン屋で「シマシマ」のクロワッサンを見かけることが増えました。
このシマシマのクロワッサンを最初に作ったのは、イタリアのフィレンツェでパン屋を営むフランス人パン職人、ダヴィッド・ベドゥ(David Bedu)氏です。
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クロワッサンのシマの突起部分にチョコやフランボワーズ、ストロベリーチョコが塗られたカラフルな新しい商品は、ウインドーの中をのぞく通行人の目を引きます。
べドゥ氏の創作はシマシマだけにとどまらず、次々と新しい「作品」を店で展開しています。
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パンが食事の中で重要な位置を占めるフランスで、クロワッサンが古い伝統の殻を破ったということは、映画からテレビ、白黒テレビがカラーテレビになったことに匹敵し、今後どんどん進化し変貌していくことになるでしょう。
プリンターの技術を導入、パンオショコラに絵や写真、メッセージ
クロワッサンは、三角に切ったパン生地にバターを何重にも挟み込んで巻いて作り、中にはなにも入っていません。
このクロワッサンに詰め物を入れたのはディジョンのパン職人、ルイ・トルトショ(Louis Tortochot)氏です。
ディジョンにある同氏のパン屋「デュ・パン・プール・ドゥマン(Du Pain pour Demain:明日のパン屋)では、サラダバーならぬ「クロワッサンバー」と称し、クロワッサンに詰めるフレイバー(キャラメル、プラリネ、フランボワーズなど)を選び、その場で詰めるという革新的なことを行っています。
さらに、同氏はショカプリント(Chocaprint®)という名称で、パンオショコラに絵や写真をプリントした商品を開発、オンラインで独自の絵柄や写真、メッセージをプリントしたものをオーダーすることができます。
フランスで珍しい、クロワッサンのサンドイッチとデザート
パリ14区にあるクロワッサンツ(Croissant’s )は、フランス初のクロワッサンのシュクレ・サレ(甘いと塩っぱい:つまりご飯とデザートの両方)と自称するクロワッサン専門店です。
実は他の国ではよく見かけるクロワッサンのサンドイッチは、フランスでは見かけません。サンドイッチといえば、バゲットが主流で、クロワッサンなど「甘い」とされるパンで作られたものは皆無です。
この店ではさらにクロワッサンにフルーツとホイップクリームを挟んだデザートも合わせて販売しています。
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ピエール・エルメが最初、カフェ・クロワッサン
クロワッサンの生地自体にフレイバーをつけるやり方も広まりつつあります。
フランスの有名なパティシエ、ピエール・エルメ(Pierre Hermé)氏が期間限定で売り出したのが最初のようですが、最近、パリ18区のパン屋ミエットブーランジェリー(Miettes Boulangerie)など、パリのパン屋さんでちらほら見かけるようになりました。
世界的に有名なパティシエが技術を磨いて様々なデザートやケーキを創作して注目を浴びる中、パン屋さんも負けてはいられないようです。
菓子パンのバリエーションが少なかったフランスでも、ようやく21世紀のパンが続々と登場し始め今後の動向が楽しみです。
執筆:マダム・カトウ