5月23日(火)に調査会社LSA/Kantarが発表した報告書によると、フランスにおける衣服・靴・アクセサリーの販売量は、2019年に比べ22%減少しました。
一方、オンラインサイトでの販売量は、少なくとも12%から18%増加しました。
フランス人は服を買わなくなっている?!
2019年第一四半期の時点では、フランスにおける衣服・靴・アクセサリーの販売による営業利益は100億ユーロを超えていました。ところが、2023年の第一四半期においては90億ユーロに及びません。
この数値はコロナ禍より改善したとはいえ、それ以前の水準には戻りきっていないといいます。
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— LSA Commerce & Conso (@LSAconsommation) May 23, 2023
販売点数についても、2021年の第一四半期には6億1600万点だったところ、2023年の第一四半期には5億7200万点に落ちこみました。2019年と比べると減少率はさらに著しい、22%です。
消費者一人一人の購入点数が減っていることが明らかです。
また、店舗に立ち寄る回数も減少しています。2019年に比べると、店舗での取引数は20%低下しました。
店舗での販売は苦境
実店舗にとっては厳しい状況が続きます。販売量、販売点数、販売額ともに低下している中、店舗の家賃は下がらないからです。多くの店舗が閉店に追い込まれることにつながっています。
服飾チェーンの相次ぐ倒産
以上の傾向は、プレタポルテ(既製服)チェーンが近年相次いで倒産していることに表れています。
例えばクウカイ(Kookai)は、2023年3月に赤字によるパリ商事裁判所にたいし、経済的な支援を得られるよう更生手続きを要請しています。しかし政府による無利子の貸付金(Prêt garanti par l’Etat)を拒否されるなど、苦境に陥っています。
クウカイは1983年にフランスで誕生し、2000年代にはオーストラリアを中心に発展したのち、2017年にはフランスで最大級の服飾ブランドであるヴィヴァート(Vivarte)が買収しています。
クウカイが倒産することになれば、今度は2,100名の従業員が解雇に追い込まれる見込みです。
原因はコロナ禍以外にも
またカマイユ(Camaieu)は、フランス国内外に500以上の店舗を展開するチェーン店でしたが、赤字に追い込まれました。そして2022年10月に全店舗を閉店し、当時、2,600名の従業員が解雇されました。
この背景には、コロナ禍はもちろん、消費行動の変化があるとされています。
とくに消費への意識の高まりによって、フランスでは古着を購入する人の割合が増えています。あるいは頻繁にコレクションが更新されるファスト・ファッションの人気も根強いです。
また、2021年には、サイバー攻撃による資金流出が影響し、財政状況が一気に悪化しました。
実店舗での消費意欲が低下している現在、こうした服飾チェーンには慎重な舵取りが求められています。
スポーツウェアは堅調
衣服・靴・アクセサリーのうち、ファッション部門の落ち込みが激しい中で、スポーツ部門は健闘しています。
この理由は、通勤時また外出時のファッションの変化によります。最近はモカサン(フラットシューズ)ではなくスニーカーを履く人や、スーツやスカートよりもスポーツ服を好む人が増えているためです。
そこで衣服の商店はスポーツウェアの売り場面積を増やし、利益を確保しようとしています。
おわりに
「ファッション大国」のイメージがあるフランスですが、時代の流れやコロナ禍により、服や靴などを店舗で購入する人の数が減っているとわかりました。
同じ傾向は日本にも見られるのではないでしょうか?
執筆あお
参照
Les Echos (03/10/2022) Camaïeu : les raisons d’une faillite
20 Minutes (fr) (01/02/2023) L’enseigne de prêt-à-porter Kookaï annonce son placement en redressement judiciaire
LSA Mode : les enseignes de sport en passe de battre les chaînes de périphérie [Baromètre Kantar/LSA]