2023年3月31日(金)、昨年歴史的干ばつに見舞われ、今年の冬も干ばつのため特に南部で水不足が深刻になっている中、マクロン大統領は待ち望まれた53項目の水資源運用計画を発表しました。
2030年にフランス全国の水の使用量10%減に、53の短期・長期計画
今回発表された水資源運用計画は主に、節水、排水の再利用、段階的料金設定の3つの柱からなり、その中には水不足が予想される今年の夏に向けて行う短期的な節水対策と、2030年までの水の使用量を10%減らすという目標を達成するため、水資源の運用を見直す長期的な対策が盛り込まれています。
目標達成のためには、飲料水、工業用水、農業用水など、用途を問わず「節水対策」を施行すると大統領は発表しています。
工業用水に関しては、近々フランスで最も大量の水を使用し、最も高い節水効果が望める50の工業施設を交え、意見交換が行われます。
水の使用量、農業が全体の6割弱
フランスにおける水資源からの総汲み上げ量、41億平方リットルのうち、使用量が最も多いのは農業で全体の58%を占めています。
続いて飲料水の26%、発電所の冷却用水12%、工業用水4%となっています。
発電の冷却用水、劣等生は「原子力発電」
三番目に使用量の多い発電ですが、中でも水を最も使うフランス電力(EDF:Électricité de France)の原子力発電所に関して、マクロン大統領は節水対策用の投資を増やす意向を明らかにしました。
フランスはウクライナ侵攻による電力不足から行った節電キャンペーンが一定の成果をあげていますが、同様に一般向けの「節水キャンペーン」を今年の夏に向け行うことが決まっています。
その一環として、電力の使用状況や逼迫時にブラックアウト区域の情報がわかるアプリ、エコワット(EcoWatt)の水バージョンも用意されます。
フランス、水の再利用たったの1%、30年に10%へ
マクロン大統領は今回の発表の中で、今後5年間で排水再利用のプロジェクトを1,000立ち上げると述べました。
フランスにおける水の総使用量の10%は3億平方リットルにあたります。
具体的には、一自治体あたりオリンピックプール3つ分、フランス国民一人あたりペットボトル3,500本分の排水を浄化し再利用することになります。
他国に大きな遅れ、イスラエルは再利用率90%
水の再利用が進むイスラエルでは、実に排水の90%がリサイクルされています。干ばつ被害が激しいスペインで14%、イタリアでも8%が再利用されています。
フランスの水道水、5分の1は道路の水道管から漏れ
フランスでは、特にここ数年、古くなった水道管や道路に埋められた配水ポイントからの水漏れが多いことが問題になっています。
道路から理由もなく水が染み出したり、時には噴水のように吹き出す動画がSNSで出回ることも珍しくなく、水不足にもかかわらず、フランスの飲料水5リットル中1リットルは水道の蛇口を通る以前に無駄に流されています。
全体量の50%が漏れている箇所は、フランス国内に170箇所もあり、早急な水道管の入れ替えが必要となっています。
この水道管問題を早急に解決するため、マクロン大統領は「1億8000万ユーロ(約261億円/1ユーロ=約143円)の緊急予算を歳出」すると発表しました。
段階的料金設定、一定量以上を超えると割高に
すでに水道水の供給が逼迫する地域では2017年から行われている、水道料金の段階的料金設定も、今回の節水対策の一環として検討されています。
マクロン大統領はこれについて「水道料金が全体的に値上げされるわけではない」と念を押した上で、「極端に使用量の多い消費者(事業者)に対し、節水を促すため」と説明しています。
これに対し、フランス水道局は今回の節水対策のほとんどの費用を負担しますが、この料金設定の導入で年間500万ユーロ(約724億円)の増収を見込んでいます。
執筆:マダム・カトウ