11月11日(金)、イタリアに最も近い水域で難民救助を行い、230人の難民を乗せたオーシャン・バイキング号(Ocean Viking)は、20日間に渡り上陸地を求めて地中海を航行していましたが、本日、南フランス、トゥーロン(Toulon)の軍港に入港しました。イタリアは上陸拒否による国際法違反、難民受け入れ、認定に関してもEU法に違反している疑いがあると、ダルマナン内相(Gérald Darmanin)は強く批判しています。
イタリア上陸拒否、難民230人乗せ20日間地中海を航行
オーシャン・バイキング号は非営利団体「SOSメディテラネ」(SOS Méditerranée)がチャーターした救助船で、今回のトゥーロンへの入港は、「例外的」に認められたと発表されています。
難民は「仲介人」に多額の費用を払い、主にアフリカ大陸、リビアの海岸から用意された粗末な小型ボートやゴムボートで出航します。制限人数を大幅に超える難民を乗船させるため、途中で沈没するボートが相次いでいます。
SOSメディテラネはリビアの海域から22キロ離れた国際海域をパトロールし、難民船の救助に当たっています。
極右政権のイタリア
出航した難民船は、アフリカ大陸から最も近いイタリアを目指すことがほとんどですが、特にシリア紛争で大幅に増えて以来あとを立たず、同国に到着する難民の膨大な数は、イタリア国内で大きな問題となっています。
最近の選挙で、第二次大戦以来最も過激な極右政権が誕生したばかりのイタリア政府が、今後こういった拒否を続ける可能性もあり、仏伊政府間で緊張が生まれています。
難民は待機ゾーンに収容、フランスへの入国はせず
難民は到着後、国際ゾーンと呼ばれる待機ゾーンに収容され、医療チームによる検査を受けます。
その後、フランス難民、無国籍者保護局(OFPRA :Office français de protection des réfugiés et apatrides)が、通常数ヶ月以上かかる難民認定の対象になるかどうかのチェックを、48時間という短時間で行います。
そもそも出身国が難民認定の対象国であるかどうか、自国に滞在することによる生命を脅かされるリスク、その他複数の観点から自国出発の動機、経緯など本人の供述をとります。
今回上陸した難民の主な国籍は、バングラデシュ、エリトリア、シリア、エジプト、パキスタン、スーダン、マリ、ギニアになっています。
ダルマナン内相は、「難民認定の条件を満たさないものは、直ちに強制送還する」と発言しています。
難民受け入れ、EU加盟国全体の失敗
SOSメディテラネは、今回のフランス政府の難民の上陸受け入れで「肩をなでおろす」と共に、上陸に20日もの日数がかかったことに「憤りを感じている」とツイートしています。
オーシャン・バイキング号はイタリア沖で難民救助を行い、寄港および難民の上陸許可を要求していましたが、なんの回答もないままシチリアとサルディニアの間の海域を航行していました。
支援を表明したコルシカ沖でフランス空軍のヘリにより、重症者3名が医療搬送されています。残りの難民は本日早朝トゥーロンの軍港に到着しています。
各国で難民上陸の押し付け合い、「嘆かわしい」状況
EU法では最も近い港が上陸を受け入れなければなりません
SOSメディテラネは、EU加盟国間で難民を押し付けあう状況を「人道的に極限状態にならないと受け入れないという状況になったのはEU加盟国全ての失敗だ」とし、「安全な上陸地の確保」をその声明の中で要求しています。
ドイツなど9カ国、難民3分の2を受け入れ
ダルマナン内相はフランスでの受け入れが決まる前、イタリア政府に対しEU法に基づき上陸許可を出すように要求していました。
内相によると、ドイツ、クロアチア、ルーマニア、ブルガリア、リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、ポルトガルの9カ国が難民認定を受けた人の受け入れを表明しています。
ダルマナン内相はまた、出演したテレビ番組で「これがヨーロッパの連帯というものだ」とした上で、イタリアはその「連帯を拒否した」と痛烈に批判しています。
右傾化で内向きか?フランスも移民政策転換期
しかしながらフランスでも移民政策の転換を迫られており、「人材不足の職種につくことを条件」にする移民政策議論が盛り上がっています。
そうした中、国会でオーシャン・バイキング号の受け入れを要求したアフリカ系議員に対し、極右政党国民連合(RN)の議員が「アフリカに帰れ」と発言、2週間の国会への出席停止処分を受けるといったスキャンダルも起きています。
国民連合は今年の議会議員選挙で577議席中、実に88席と過去最高数の議員を出しています。
執筆:マダム・カトウ