9月6日(火)、フランスで最も権威ある文学賞のひとつ、ゴンクール賞(Prix Goncourt)にノミネートされた15作品が発表されました。今後約2ヶ月かけて受賞作品が選考されます。
ゴンクール賞ノミネート作品
ゴンクール賞は、1903年の設立以来、マルセル・プルースト(1919年)、シモーヌ・ド・ボーヴォワール(1954年)など歴史に名を残す文人が受賞してきた権威ある賞です。
アカデミー・ゴンクール(Académie Goncourt)による選考は、毎年3つのステップをふみます。今回は、その第1段階となる、15作品が発表されました。
— Académie Goncourt (@AcadGoncourt) September 6, 2022
10月5日・26日にはそれぞれ第2段階の8作品、第3段階の4作品が、そして11月3日には最終的な受賞作品が発表される予定です。
注目のノミネート作品
ノミネートされた15作品のなかで、特に注目されている2作品を紹介します。
La Vie clandestine
モニカ・サボーロ(Monica Sabolo)氏は、ミラノ出身の作家で、7作品目となる『地下の生活』は8月18日にGallimard社から出版されたばかりです。
急進左派のテロ組織アクシオン・ディレクト(Action directe)に関する調査をもとに書かれた作品で、サポーロ氏の新聞記者としての顔も生かされている作品といえそうです。
Taormine
イヴ・ラヴェイ(Yves Ravey)氏は、すでに2004年にマルセル・アイメ賞(Prix Marcel-Aymé)など数々の賞を受賞している実力派です。
作品Taormineでは、ふさがった結婚生活を送る夫婦が主人公です。シチリア島へバカンスに出かけますが、自動車事故などに襲われる…というあらすじです。伏線を貼る、不穏な雰囲気を描くことに長けているとされるラヴェイ氏の力量が示されていると、すでに期待が高まっています。
デパント氏の作品はノミネートならず
今回ノミネートの段階から注目されていたのは、ヴィルジニー・デパント(Virginie Despentes)氏です。
デパント氏は、1969年ナンシー生まれの作家で、映画監督としても活躍しています。2010年には、ゴンクール賞と並ぶ文学賞であるルノドー賞(Prix Renaudot)を受賞しています。
2020年1月までアカデミー・ゴンクールの審査員であったところ、自ら辞任したことで知られています。辞任の理由として、当時デパント氏は、執筆に専念するため、アカデミーの一員として自らの能力への過剰な期待への不安を挙げていました。
すでに6万部『ばか者へ』
2022年8月17日に出版されたデパント氏の『ばか者へ』(仮訳:Cher connard)は、すでに6万部を超える売れ行きで、今年度のノミネートが予想されていましたが、選考からは漏れました。
Le prix Goncourt a écarté de sa première sélection le roman de Virginie Despentes, “Cher connard”, le plus gros succès de la rentrée littéraire, a annoncé le jury mardi #AFP pic.twitter.com/iUuxSkVV2i
— Agence France-Presse (@afpfr) September 6, 2022
この小説では、かつての映画スターであるRebeccaと、その幼なじみの兄であるOscarが主人公です。50代にさしかかり図らずも再会した2人が、手紙をやりとりする中で薬物から離れる決心をする…というストーリーです。
今後も注目
デパント氏の作品が選ばれなかった理由について、ストーリーが倫理的に受け入れられにくいものであるという批評家もいるほか、アカデミー・ゴンクール会長のディディエ・ドゥコワン(Didier Decoin)氏は、デパント氏がアカデミーから離れていったこととの関係を挙げています。
しかし、作品としての評価は高く、ドゥコワン氏はデパント氏がノーベル賞を受賞するほどの偉大な作家であると断言しています。今回の受賞はならずとも、今後もデパント氏の活躍が期待されます。
執筆あお
参照
Académie Goncourt 公式HP
Franceinfo (01/09/2022) “Taormine” : un nouveau polar décalé d’Yves Ravey sous le ciel de Sicile
Franceinfo (02/09/2022) “La vie clandestine” : ce que la romancière Monica Sabolo a déterré de sa propre vie en enquêtant sur Action directe
Franceinfo (07/09/2022) “Cher connard” : les vertus du dialogue, par Virginie Despentes