仏マクロン大統領へ「イギリスに渡った難民引き取れ」と英ジョンソン首相が書簡

2021.11.26

フランスマクロン大統領へ「難民引き取れ」ジョンソン首相書簡にショック11月24日(水)にフランス沿岸からドーバー海峡をゴムボートで渡ろうとした難民27人が溺死した事件を受け、フランスとイギリスの内務省が難民問題での協調を試みる中、英ジョンソン首相がマクロン大統領に宛てた突然の書簡に衝撃が走っています。

 

ドーバー海峡での死者、2018年以来最多の27人

イギリスへの密入国を試みようとフランス北部の町カレー(Calais)周辺に集まる難民(主に経済難民)は2018年から急増しています。

これまで彼らの多くはユーロトンネルを徒歩で渡ったり、トラックの荷台に侵入したり、カレー港から出航する船に潜入したりしていました。しかし、密入国者を阻止したいイギリス政府の強い要請でフランス側のコントロールが強化されたため、監視がいない沿岸からゴムボートで出航を試みる難民が急増しています。

今週水曜日に難破したゴムボートに乗っていた人のうち、死亡したのは男性17人、女性7人、少年3人、助かったのはたったの2人でした。

犯罪組織が「渡し人」、荒波をゴムボートで

難民たちは「渡し人」と呼ばれる組織だった犯罪者たちに大金を払い、船に乗る権利とライフジャケットを貰いますが、そもそも業者が用意するゴム製のモーターボートは、波が荒く33kmの距離があるドーバー海峡を渡るにはお粗末なうえ、毎回明らかに定員オーバーと思われる人数を乗せるため、沿岸からそう遠くに行かずして難破する事故が多発しています。

しかもボートに乗る難民達のほとんどは泳ぐことができません。

イギリス政府は、以前からフランスの沿岸警備隊の監視が「手ぬるい」と批判してきましたが、イギリスの対岸から最短で33kmの距離にあるフランス沿岸はベルギーの国境まで約150kmにも及ぶことから、フランス側は昼夜監視を続ける事は「非常に困難である」と主張しています。

 

仏英難民問題で不協和音、ジョンソン首相「移民の引き取り」提案でトドメ

事態を重く見た仏英及び欧州委員会は、27日に他の沿岸国であるベルギー、オランダにドイツを含めた合同対策会議をカレーで行う予定になっていました。

仏英内務省間では、合同による沿岸警備隊の陸空海でのより厳しい監視を行い、さらに犯罪組織による「渡し人」行為を阻止するため、情報部間での協力の強化について検討されることになっていました。

ところが、会議を待たずしてジョンソン首相はその書簡の中で「EUが人道的立場からベラルーシやロシアと結んだような、難民引き取り協定を結ぶ用意がある」と言及し、更にその書簡自体を自らのツイッターで公開してしまいました。

これに憤慨した仏ダルマナン内務大臣は、イギリスのパテル内務大臣(Priti Patel)の対策会議への参加を拒否しました。

ダルマナン大臣は「ジョンソン首相がマクロン大統領宛にこういう趣旨の書簡を送っただけでも遺憾」であるだけでなく、その「文面を公開したことは怒り心頭だ」と述べています。

【経済難民】なぜ命がけでイギリスへ?

仏英間の難民問題による不和は今に始まったことではありません。

2018年のシリア内戦から急激に増えた本来の意味での「戦争による難民」ですが、今年のタリバンによる政府掌握で内政がさらに悪化したアフガニスタン、パキスタン、バングラデシュなどの南アジア、アフリカなどからの「経済難民」は今までも欧州に来ていました。

カレーで難民援助の活動をする非営利団体が、これらの経済難民たちが「命がけ」でイギリスを目指す理由を調べたところ、最も多いのが「経済的な理由」で「イギリスでは不法滞在者が仕事を見つけることができる」でした。

すでに現地にいる不法滞在者が「何年もの間警察に捕まらずに仕事をしている」といった情報から、イギリスに行けば仕事があると思っているからです。

ブレグジットで「仕事にありつける?」の罠

確かにイギリスでは2000年ごろに経済的なブームから、知的労働者以外の労働者を受け入れた時期もありました。しかし、イギリスの移民政策は今までも非常に厳しく、特にブレグジットについての国民投票時期は「外国人排斥」の機運が高まっていたため、不法滞在者が夢見る「自由で住みやすい国」とは言い難い状況と言えます。

しかしながら、ブレグジットと機を同じくして始まったコロナ禍の影響で欧州系の移民の帰国が増え、再び安い労働力が不足していることから、到着すれば「直ぐに仕事につける」と思っているようです。

また、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュ、イラク、スーダンなどイギリスの旧植民地国の出身者は、親戚や自国出身者のコミュニティがある事から、到着して直ぐに住むところの確保が期待できることを動機にあげています。

更に、これらの国の人は英語を解する事からもイギリスを優先する傾向があるようです。

執筆:マダム・カトウ

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