8月21日(金)、9月の新学期を前に、今年も6歳から17歳まで(小学校〜高校)の子供を持つ家庭のうち、収入の少ない約300万世帯に「新学期準備手当」と呼ばれる補助金が給付されます。コロナ禍の影響での収入減などを考慮し、今年は児童一人当たり100ユーロ(約12,500円/1ユーロ=約125円)増額されました。
1児童あたり最高500ユーロ支給
新学期準備手当は、9月からの新学期に向け、文房具や衣類などを購入するための補助金で、毎年8月に支給されます。今年は18日より至急開始されました。
手当を受ける条件は、子供の人数と世帯収入により決定されます。
世帯あたりの年収上限:
子供1人: 25,093ユーロ(約3,136,000円)
2人: 30,884ユーロ(約3,860,000円)
3人: 36,675ユーロ(約4,584,000円)
4人以上: 年収+子供1人あたり5,791ユーロ(約723,000円)
本当に子供の文房具購入に使われているのか?《クーポン制》提案も
新学期準備手当が配布されるこの時期になると、毎年その用途について議論が行われます。
今年も国会議員の一人、野党右派のピエール=アンリ・デュモン(Pierre-Henri Dumont) 氏は「不正を防ぐため」に現金支給ではなく、「クーポン制」に変更し法令化することを提案しています。
クーポン制とは、就学証明と引き換えにクーポンを配布し、それを地方自治体が用意した文房具のセットと交換する「現物支給」の仕組みです。
手当は不十分?貯金に回す人も
家族手当や子ども手当などを支給する、家族手当基金(Caisse d’allocations familiales)が2013年に行った、新学期準備手当の用途に関する調査によると、新学期の準備費用は子供一人の家庭で平均882ユーロ(約110,000円)、2人で1,195ユーロ(約149,300円)、3人で1,549ユーロ(約193,600円)でした。2013年当時の新学期準備手当は356ユーロ(約44,500円)〜388ユーロ(約48,500円)でしたので、十分とは言い難い額といえます。
一方、1994年の調査では、回答者の4%が「貯金に回した」「借金や税金の支払いに使った」と答えています。
子供のいる家庭は、いない家庭より生活水準が低い
社会学者のドゥニ・コロンビ(Denis Colombi)氏は、「現金支給だからといって、手当が別の用途に使われている可能性はないとは言えないが、不正が横行しているとも言えない。いずれにせよ使途に関する十分な調査がない」ため、「家族手当基金のあり方を批判することはできない」と、手当の正当性を主張しています。
経済学者アンリ・ステルディニャク(Henri Sterdyniak)氏によると、フランスは子供の20%が貧困に陥っており、また子供のいる世帯はいない世帯に比べ、生活水準が20%低いことが調査で明らかになっています。
スマホやテレビの購入、なにが悪い?
ステルディニャク氏は「そもそもフランスの子ども手当の額が低い(注)」ことが問題で、「現代ではパソコン、スマホ、テレビや洗濯機などは生活必需品」であるため、「新学期になるとテレビやスマホの購入が増える」という社会的な批判を牽制しています。
特に、ロックダウン中の学校閉鎖で、家にパソコンがない子供がオンラインで学習できず社会問題になったことを例に挙げ、「新学期の準備手当がこういった電化製品の購入に充てられることは、税金の無駄遣いではない」と主張しています。
執筆:マダム・カトウ