1月30日(木)、2月1日(土)にイギリスがEU(欧州連合)を離脱します。「明後日からなにか変わるのか?」情報誌ヴァンミニュット(20minutes)が、税関および出入国管理局次長のジャン=ミシェル・ティリエ(Jean-Michel Thillier)氏に質問しました。
北駅、空港、陸路の出入国審査は通常通り
フランスとイギリスの間を行き来する人は毎年3000万人に上り、そのうちの約1100万人が、パリ-ロンドン間を片道約2時間半で結ぶ高速列車《ユーロスター》(Eurostar)で移動しています。
現在、乗客のフランスからの出国およびイギリスへの入国審査の両方が、発着するパリ北駅(Gare du Nord)で行われています。よってロンドンセントパンクラス(St Pancras)駅到着時の入国審査はありません。イギリス出国時も同じく出発駅で英仏両方の係官により出入国審査が行われています。
ティリエ氏の見解は
イギリスのEUからの離脱が実現すると「空港や駅での入国審査が長蛇の列になる」という懸念に対しては、今週末からいきなり出入国審査方法が変更になることはない、と述べ、そのような状況に直ちに陥ることはないとの見解を示しました。
2月1日より移行期間に突入、2020年末まで
《ブレグジット》といっても実際は今週土曜日からまずは移行期間に入り、この間に貿易協定などが検討されます。
イギリスは元々シェンゲン協定(注)に加入しておらず、国境での入国審査や税関を撤廃した国とは違い、すでにこれらが国境に配備されているため、空港、駅、陸路での両国の出入国はこの移行期間中であっても何ら変わることはない、と説明しました。
移行期間が終了するとどうなる?
移行期間の終了と同時にイギリスのEU離脱が実現しますが、気になる《本番》では、英仏の人の往来に、どのような影響がでてくるのでしょうか。
ティエリ氏の見解では、移行期間が終了したからといって、英仏両国民に対してビザ取得が義務づけられるとは考えにくい一方で、この期間に検討され変更になる事項はある、とのことです。
また、本格的な離脱が実現すると、イギリス人はアメリカ人や中国人などの欧州圏外の外国人と同じ扱いになるため、例えばペット同伴の旅行や《商品》の持ち込みなどに変更が生じる、と述べています。
EU加盟国の課税協定が適用されなくなる
フランスに入国するイギリス人が持ちこむ《商品》は現行のEU加盟国の課税協定が適用されなくなり、EU圏外の外国人への免税範囲300ユーロ(約36,000円/1ユーロ:約120円計算)以上の持ち込みに課税されることになりますが、移行期間中に課税協定が別途結ばれて緩和される可能性があるとのことです。
しかしながら、短期間で多数の取り決めをかわすのは困難なため、移行期間は2022年末まで延長される可能性も考えられます。
フランス側のブレグジットの準備は?
ティリエ氏によると、フランスの税関では1年半前から50名の職員が、情報システムを含むブレグジットの準備を行っています。
人の移動に関しては大きな変更はない、としつつも、商品の往来に関しては大変な作業が必要とされることが考えられ、1年間で英仏間を行き来するトラックは1000万台にも上ることから、通関手続きをどうやって短縮するのかが大きな課題だ、と述べ、必ずしもフランス側のブレグジットへの準備が万全ではある訳ではないことを示唆しました。
いよいよ間近に迫ったブレグジット、今後どのような影響が出てくるのか注目が集まります。
注)シェンゲン協定(Schengen Agreement)は、ヨーロッパの国家間で審査なしで国境を越えることを許可する協定です。
執筆:マダム・カトウ