10月17日(木)、フランス国立統計経済研究所(通称インセ)(L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques:l’Insee)は2018年の貧困層の割合は推定14.7%と発表しました。
2018年貧困層が拡大
インセの推定によると、2018年のフランスの貧困層は14.7%、前年の14.1%から0.6ポイント上昇しています。
フランスの貧困層とは、インセが定める生活水準の中央値の60%を切る人をさします。
今回の調査で用いられた中央値は、独身者1人あたりの月々の手取り収入が1735ユーロ(約20万8000円)で、その60%にあたる1041ユーロ(約12万5000円)未満の人が貧困層にカウントされます。
2017年に890万人だった貧困層が、2018年には930万人と40万人増加したことに対し、非営利団体「不平等監視局」(Observatoire des inégalités)の部長ルイ・モラン氏(Louis Maurin)は「バッドニュースだ」と、今回の結果に危機感を覚えています。
この数値は現在のところ推定値で、確定値は2020年に算出されますが、2014年から14~14.2%の間で安定していたものが昨年は増加傾向に転じています。
富裕層の配当収入増加で格差が広がる
貧困層拡大の理由の一つに、インセは2018年の富裕層の「流動資産価値」上昇をあげています。
富裕層の投資による配当収入などが増える中、一部の資産に対する課税方法が累進課税からPFU(prélèvement forfaitaire unique)と呼ばれる固定額制になったことで、この層の流動資産をさらに増やしています。
一方で、低所得者向け住宅(HLM)への補助金額が下げられたため、結果的に貧困層の所得を減らす形になっています。
補助金減額の理由としては、低所得者向け住宅の家賃が下がったからですが、補助金は「収入」と見なされるのに対し、家賃の減少は「支出」に当たるため、収入しか考慮しないインセの統計には反映されていません。
政府の対策成果上がらず
政府が貧困対策の一環として今までに行った住民税減額等の政策は、貧困層のすぐ上の中間層には恩恵があったものの、真の貧困層を減らすという意味では成果を挙げていません。
このような状況の中、昨年フランス政府は85億ユーロ(約1兆261億円)を投じ、本格的に貧困層対策に乗り出しました。
またこの10月、統一最低就業所得(revenu universel d’activité)と呼ばれる支援制度の2023年導入を検討するため、知識人や市民へのヒアリングを開始しました。
この制度は現存の3つの支援金、生活保護(le revenu de solidarité active:RSA)、就業支援金(la prime d’activité)、住宅支援金(l’aide au logement :APL)を1つにまとめることを目的としています。
1ユーロ=約120円
執筆:マダム・カトウ