16日(月)、娘によるなりすましではないかとの疑惑が出ていた、正確に記録が残る人類史上最高齢の記録を持つフランス人女性、ジャンヌ=ルイーズ・カルマン(Jeanne-Louise Calment)さん(享年122歳)に対し、フランス研究チームがカルマンさんは間違いなく史上最高齢であるとの見解を発表し、なりすまし疑惑を否定しました。
ジャンヌ=ルイーズ・カルマンさん
ジャンヌ=ルイーズ・カルマンさん(以後、カルマンさん)は、1875年2月21日に南仏のアルル(Arles)で生まれ、1997年8月4日まで、実に122年と164日生きた、人類史上最も長く生きた女性とされています。1875年に生まれた著名人は、作曲家のモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel)や心理学者のカール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung)、民俗学者の柳田國男(やなぎたくにお)などがいます。
ロシアの研究者らが世界最高齢記録に嫌疑
カルマンさんが122歳と164日生きたという記録に関しては、カルマンさんの生前中にも様々な方面から疑惑の声が上がっていました。
昨年の12月には、ロシアのモスクワ大学の数学者ニコライ・ザーク(Nikolai Zak)氏や老年学者のバレリー・ノボセロフ(Valery Novoselov)氏らが、数か月にわたり生前の発言や写真、カルマンさんを知る人などからの証言、自治体の記録など、カルマンさんの生涯を調査し、「1997年に亡くなったのは、ジャンヌ=ルイーズ・カルマンさんではなく、娘のイヴォンヌ・カルマン(Yvonne Calment)さんだ」とする報告書「Jeanne Calment: the Secret of Longevity(ジャンヌ・クレマン、その長寿の秘訣)」を発表しました。
娘のイヴォンヌさんが成りすましたか
ザーク氏は、1930年代に発行された身分証明書に記載されているカルマンさんの身体的特徴と、老後のカルマンさんの身体的特徴が一致しない点を挙げています。
娘のイヴォンヌさんが胸膜炎で死亡したとされる1934年に死亡したのは、実際にはカルマンさんで、その後は、娘のイヴォンヌさんが相続税の支払いから逃れるためにカルマンさんに成りすましていた、と述べています。
仮に1997年の8月に死亡したのが、カルマンさんではなくイヴォンヌさんだった場合、99歳で死去したことになります。
再調査の結果は「カルマンさん本人」
このロシア人研究者らの報告書を受け、1990年代にカルマンさんについて、記録が残っている人類史上最高齢と発表したフランス国立保健医学研究所(Institut national de la santé et de la recherche médicale/INSERM)の専門家チームが、過去のデータと現在のデータを再調査した結果、「正確に年齢の記録が残る史上最高齢の人物であることが改めて確認された」、と発表しました。
アルルを管轄するタラスコン(Tarascon)裁判所は、ロシア人研究者らの報告書について「厳密性と客観性に欠ける」と、彼らが進めていたカルマンさんの死亡証明書の変更願いを却下しました。
ゴッホと会ったことのあるカルマンさん
カルマンさんは、1888年にアルル滞在中だった画家フィンセント・ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh)が、カルマンさんの親族が経営する画材店に訪れた際に本人に会ったことがあるといい、ゴッホにあった人物としてインタビューを受けています。
インタビューでカルマンさんはゴッホについて、「彼は酷い身なりで、アルコール漬けだった」と述べています。
85歳でフェンシングを始め、100歳まで自転車に乗られていたカルマンさん。
1997年に死亡したのが、カルマンさん本人だったとしても、もしそうではなかったとしても、そっとしておきたいと思うのは私だけでしょうか。
執筆:Daisuke