フォアグラ、牡蠣、サーモン 国民の約4割がクリスマスの伝統的な食事に懸念

2018.12.25

クリスマスを控え、フランスメディアは一斉に、フランスに本部を置く民間の調査会社イプソス(Ipsos)が、フランス人のおよそ37パーセントが、フォアグラや牡蠣、サーモンなどといった、フランスのクリスマスの伝統的な食事に対して、倫理的な観点から懸念しているという調査結果を発表した、と報じました。

 

フランスのクリスマスの伝統的な食事

フランスのクリスマスでは伝統的に、食前酒としてシャンパン(Champagne)、前菜にフォアグラや牡蠣、サーモンなどが提供され、その後、メインディッシュとして七面鳥やホロホロチョウ、シャポン(chapon)と呼ばれる食肉用に太らせた去勢された雄鶏などの丸焼きを食べ、最後にケーキなどのデザートを食べるのが一般的です。
(画像は順番に、フォアグラ、牡蠣、サーモン、シャポンの丸焼き)

   

 

倫理的観点から伝統的な食事に懸念

調査会社イプソスが行った調査によると、フランス人の37%が、これらの伝統的な食事に対して、倫理的な観点から懸念を抱いていて、その内の21パーセントの人々が環境に配慮した食材に移行していく準備がある、と答えました。

高まる倫理観、安全性への関心

消費・住宅及び生活環境協会(l’association CLCV /Consommation, logement et cadre de vie)のウェンディ・シ・ハッセン(Wendy Si Hassen)フードプロジェクトマネージャーは、「消費者の、農法や産地に対する関心の高まりを受け、生産者は透明性を確保していく以外に方法はない」と述べ、消費者がその製品がどのような工程を踏んで生産されているのか、どこから届いているのかなど、倫理的及び安全面に関心が高まっていることを述べています。

フォアグラの年間売り上げの75パーセントがクリスマスの時期に集中する食品ブランド、ラベリ(Labeyrie)のジャック・トゥロッティエ(Jacques Trottier)ゼネラルマネージャーは、「過去2年間注意深く観察してきた結果、より健康的な食材に対する強い要望があきらかとなった」と述べています。

ラベリは、90年代から既に天然のサーモンをビオ(Bio)として販売してきました。しかし、流通過程で一切冷凍させないため、流通業者を納得させるまでに数年間かかったということです。

ビオは、遺伝子組み換えなど人の手を加えず、化学肥料、農薬使用の禁止、合成着色料や香料、化学調味料、保存料等を使用せずに加工されたものだけが付けることが出来る、オーガニック(有機農法など)認定です。

フォアグラはビオ認定ができるのか

フォアグラに関しては、動物への強制給餌によって行われる生産方法が、ヨーロッパの有機農法基準に準じていないため、ビオとして販売することはできません。

フォアグラの生産方法は、アヒルやガチョウに強制的に餌を与えて「脂肪肝」の状態にするため、度々動物虐待として批判の対象に上がっています。フォアグラ「Foie gras」はフランス語で「脂肪肝」を意味する言葉です。

かつては、農家はアヒルやガチョウの重さによって給料が支払われていたため、より太らせるために食べさせ過ぎていました。しかし、屋外でより自然な状態で飼育する方法でも、充分フォアグラとして流通するまで太らせることはでき、更にこの30年間で飼育期間がおよそ10日削減することが出来るようになった、と、マリー=ピエール・ぺ(Marie-Pierre Pé)フォアグラ用家禽生産者委員会(Comité interprofessionnel des palmipèdes à foie gras)ゼネラルマネージャーは話します。

水質に依存する牡蠣

牡蠣のビオ認定は海の水質に依存するため、例え同じ業者が同じように生産していたとしても、また遺伝子組み換えなど人工的に手を加えていなかったとしても、ビオ認定を受けることは難しく、現在販売されている牡蠣のほとんどはビオとして認定されていません。

 

より環境に配慮し安全な食品を

より環境に配慮した生産方法で安全な食品を食べたいという願いは、今後も続いていくだろう、とラベリ社のトゥロッティエゼネラルマネージャーは言います。

また、動物への強制給餌などをやめる倫理的な観点から、ビオ製品を扱う商店のビオコープ(Biocoop)などでは、フォアグラの代わりに100パーセント野菜でできた「フォグラ(faux gras/偽脂肪の意味)」や、魚卵でできている「タラマ」の代わりに海藻などをベースにしたビーガン(Végan/絶対菜食主義者)向けの製品も開発しています。

今後もこうした動きは加速していくとみられることから、フランスのクリスマスの伝統的な食事も少しずつ姿を変えていくのかもしれません。

執筆:Daisuke

 

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