11月14日(水)、アンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)パリ市長が、パリ市内の車両の通行制限を導入し、パリ1区から4区の歩行者天国(いわゆる「ホコ天」)化を検討していることが、AFP通信社を通じて公表され、賛否両論の議論が巻き起こっています。
「ホコ天」化は、パリ1区から4区までが対象
パリ市はイダルゴ市長主導の下、「パリ1区から4区内に車両制限エリアを設定し、そのエリア内に自動運転式電動バスを導入する」ことを検討しています。この構想は、近々対象となる各区の区議会で提議されることになっています。
すでにパリ市内には限定的なホコ天はありますが、今回の提案ではその範囲を広げ常習化しようとしています。
まずはその第一段階としてパリ市は、毎月第一日曜日に対象エリアをホコ天化し、2019年から徐々に毎週(日曜日)に増やしていく事を検討しています。
イダルゴ市長、再選に向けて公約の一つに
イダルゴ市長は2014年にパリ市長に就任して以来、今年で任期5年目となります。2020年に市長選が行われます。イダルゴ市長はまだ立候補の意思を公表していませんが、この「パリ歴史的中心部」のホコ天化が、再選の公約の一つに入っていると言われています。
任期中市長が「パリの空気の清浄化」を掲げ推進した、セーヌ川河岸道路のホコ天化はすでに実行されていますが、次の段階として市内から徐々に車を排除しようとしているようです。
パリ市民は賛否両論
ホコ天対象の地区に住む住人は、「イタリアのフィレンチェやローマの歴史的中心部はとっくに車両の制限を行っている。イタリア人にできるのだから、パリも追従すべき」や「日曜日にホコ天になるとき、車の騒音もないし快適」、「自転車やキックボードや徒歩、公共交通機関で移動しているから車がいなくなるのは嬉しい」など歓迎する意見が多いようです。
一方、商店は、「ホコ天になるとお客さんがリラックスして買い物できる」という歓迎派と、「郊外から車で買い物に来る客足が途絶える」、「ホコ天の時は客足は増えるが、ぶらぶら散歩している客は何も買わない」などの反対派に分かれています。また、町工場では「資材の搬入や商品の搬出が困難になるため経営できなくなる」など、深刻な問題も発生しかねません。
さらに「高齢者の移動」や「子供の送り迎え」に車が必要なケースも多く、まだまだ各方面での検証が必要です。
イダルゴ市長は、「これらの区はノートルダム寺院やポンピドゥーセンター、マレ地区やレアール地区などがあり、パリの観光名所やショッピングの中心になっているため、それぞれの区の要望でもある」と発言しています。しかし、1区の区長は先日テレビのインタビューで反対意見を述べるなど、今後の調整が注目されます。
不動産価格の高騰も
パリ1区から4区は観光、商業の中心として、すでに不動産価格は高止まりしているエリアですが、歩行者天国の導入で価格は一時的にさらに高騰すると不動産業界は見ています。
執筆 : マダム・カトウ