2023年12月5日(火)、フランスで『パフ』(puff)と呼ばれる使い捨て電子タバコの販売を禁止する法案が、昨日下院で可決されました。今後上院セナ(Sénat)で審議が行われます。フランス政府はEUのバックアップの元、来年の夏頃までに販売禁止の施行を目指しています。
未成年の『パフ』依存が問題に
安価、カラフルでキュートなデザイン、ストロベリーアイスやスイカ、チョコレートフレーバーで人気の使い捨て電子タバコは、ニコチン含有量が0〜20mgと低いものの、「未成年のニコチンやタバコへの依存を促す」と、保健相オレリアン・ルソー(Aurélien Rousseau)は警鐘を鳴らしています。
この法案を提出したフランセスカ・パスキーニ(Francesca Pasquini)下院議員は、「料金があまりにも安く、子供に受けやすいフルーツやスイーツのような風味の使い捨て電子タバコの購入に、しばしば親の目が届かない」と動機を説明しています。
子供が喫煙するきっかけに
ルネッサンス党(Renaissance)のミッシェル・ロッザーナ(Michel Lauzzana)議員は、国立医学アカデミーは、パフを「未成年の子供たちに仕掛けられた罠」と呼んでいると発言しています。
ルソー保健相は、フランスの13歳から16歳の子供のうち10人に一人が、一度はパフを吸ったことがあるという統計結果が出ており、今後若年層の喫煙者増に繋がると問題視しています。
さらに、プラスチック製の同製品は「環境破壊を加速する」ことも、使い捨てプラスチックの削減を目指すフランス政府が販売禁止を目指す理由となっています。
昨日4日の答弁では、(この製品の販売を放置しておけば)フランス国民の健康を害する「時限爆弾」になるといった、主に賛成発言が飛び交いました。
野党極左、不服従のフランス党(LFI : La France insoumise)のラシェル・ケケ(Rachel Keke)議員は、「政府は模範を示すべきだ」と、議会でしばしば電子タバコをふかしているボルヌ首相(Elisabeth Borne)を暗に批判する場面もありましたが、満場一致で可決しました。
タバコ業界、法の目をかいくぐるイタチごっこ
パフが販売禁止になることを想定し、業界はすでにリチャージできるパフを用意しています。
今回禁止する製品は当初「使い捨て」のみでしたが、法案委員会はバッテリー充電が可能で6,000から9,000回使用できる製品も禁止の対象に追加しなくてはなりません。
タバコからニコチン配合の新製品へシフト
「喫煙」への逆風が強まって久しい業界では、すでにタバコではない新製品の開発に力を入れています。
こうして生まれたのが、ニコチン入り爪楊枝やファッショナブルな『ニコ・パウチ(Nico-Pouche)』(sachets de nicotine)です。
小さな袋に入った粉を上唇の下の歯茎に塗るニコパウチはSNSで話題になっています。フランスでは禁止されているものの、インターネットで購入して手に入れることは不可能ではありません。
タバコ業界は常に法の一歩先を行き、中毒性のあるニコチン含有製品で新しい顧客層を開拓しています。
フランス人の「回避できる」死因のトップ
フランスの喫煙による死亡者は年間75,000人に上り、回避できる第一の死因として問題視されています。
執筆:マダム・カトウ