フランス料理の美しさを際立たせるのがテーブルマナー。フランスでは料理を楽しむためにテーブルマナーが生まれ、16世紀から長い時間をかけて磨かれてきました。その後、似たようなテーブルマナーのルールを築きあげてきたのがイギリス。歴史的にライバル関係にあった両国のテーブルマナーはあえて異なるように設定されています。フランスの車が左ハンドルなのに対して、イギリスが右であるのと同じようなものです。日本の公式マナーではイギリス式が採用されているため、フランスと真逆で覚えている人のほうが多いかもしれません。ここではポイントをおさえたフランス式のテーブルマナーをご紹介します。
フォークとナイフの使い方
フォークとナイフが複数並んでいる場合、外側から順に使うことは知っている人も多いと思います。では実際の使い方はどうでしょうか。フォークの背に料理をのせて口に運んでいませんか?実はこれはイギリス式のマナー。フランスではフォークの腹に料理をのせます。また、料理をカットした後にフォークを右手に持ち替えてもOK。食事の途中で席を離れる時はフォークとナイフの先をお皿の縁にかけるように「ハの字型」に置きます。そして料理を食べ終えたら時計の「3時の方向」にフォークとナイフを揃えて置きます。いずれもナイフの刃は必ず自分に向けて置き、落とした時は自分で拾わずにスタッフを呼ぶのがスマートです。
《その他のポイント》
・ガチャガチャと音を立てない。
・軽くワキを閉めながら、フォークとナイフを持つ。
・ステーキは一度に全部カットしない。
・話に夢中になって、フォークやナイフを振り回さない。
スープの飲み方
スープの飲み方にもイギリス式とフランス式があります。フランス式は2説あり奥から手前にスープをすくう場合と横側から中央に向かってスプーンを入れる方法です。口に運ぶときはスプーンの先を自分に直角に向け、スープの量が少なくなってきたら皿の奥を軽く持ち上げてお皿をかたむけてスープをすくいます。またフランスの家庭に招かれた時など、残ったスープやソースをパンでぬぐって食べる場面を見かけることがあると思います。決してマナー違反ではありませんが、高級レストランや公式の場所では控えましょう。
《その他のポイント》
・スープを飲むとき音を立てない。
・熱いからといってフーフー息を吹きかけて冷まさない。
・お皿はテーブルから離して持ち上げない。
ナプキンの使い方
ナプキンは食事中に衣服を汚さないため、また口元や手先を拭く目的で使用します。イギリス式とフランス式で使い方の違いはありません。オーダーが済んで飲み物が運ばれてくる前に膝の上に置くのがベストタイミング。ナプキンは1/3くらいのところで二つ折りにし、輪の方を手前にして膝に置くことで、口元がサッと拭きやすくなります。トイレなどで席を立つ時は椅子の上にナプキンを置き、帰るときはテーブルの上に無造作に置きます。この行為はキレイにたたむのを忘れるくらいに美味しかったという意思表示。キレイにたたまずにテーブルの上に置くのがマナーですが、下品にならない程度にしましょう。
《その他のポイント》
・飲み物を口にする前に、ナプキンで口の脂を拭き取る。
・用意されたナプキンを使い、自分のハンカチは使わない。
・ナプキンは首に巻かない。
・主賓や上司が同席の場合は、先にその人が手に取るまで待つ。
あとがき
日本ではイギリス式が定着しているため、フランスに来て「あれ?私逆にやっている」なんて気付くこともあると思います。ただイギリス式でもマナー違反ではなく、周りから指摘されて恥ずかしい思いをすることもありません。テーブルマナーの本来の目的である「料理を楽しむこと」ができていれば、どちらでもかまわないのかもしれません。しかしこの国の文化やマナーを知るのも、フランス生活を楽しくする1つの手段です。フランス式のテーブルマナーにぜひトライしてみてください。
執筆者:MARU