フランス語の勉強を始めてしばらく経ち、使える単語の数や動詞の活用形などが増えてくると、レッスンの内容もストレスなく理解できるようになります。フランス語の先生との会話も弾みますよね。なのにレッスンの外で一般のフランス人の会話を耳にすると、途端にチンプンカンプンになるのはどうしてでしょう。
今回は、どうしてそんなことが起こるのか、についてお話します。
先生のフランス語は分かるけれど、友だちのフランス語は分からない
フランス語の先生とフランス人の友だちの話し方の違い
例えばレッスン中にフランス語の先生が、週末の出来事を生徒さんに話したとしましょう。
Je suis allé(e) au cinéma avec mon ami(e) et on a regardé “ABC”.
:友達と一緒に映画館に行って「ABC」という映画を観たのよ。
Il était très intéressant.
:すごく面白い映画だったわ。
こんな風にとても分かりやすく話してくれるはずです。ところが同じ内容をフランス人の友人が話すと以下のようになるでしょう。
J‘ai été au ciné avec un ami, on a vu “ABC”.
:友達と一緒に映画に行って「ABC」を見たの。
Il était pas mal, j’ai bien aimé.
:わりと面白い映画でね、私は結構好きだったわ。
「私は~に行きました」の最もシンプルなフランス語は ”Je suis allé(e) ~” です。一方、日常会話でよく使われる言い方は “J’ai été~” や “J’étais~” 。 cinéma も省略して ciné と言われることがほとんどです。regarder も長いので vu に置き換えられることが多いでしょう。
さらに「面白かった」という言い方は、友人同士の間では ” Il était pas mal ” ” j’ai bien aimé.” などの言い方がよく使われます。” Il est très intéressant. “ は自分はその映画に興味を抱いたかどうかと評価するニュアンスが伝わりますが、友人同士の間では「自分が映画を観ながらいい時間を過ごせたのかどうか」という気持ちに重きを置いた言い方になります。
※J’ai été au ciné という表現は本来は「映画館にいた」という意味ですが、現在では「〇〇へ行った」という意味で広く使われています。ただし、年配の方の中には「使い方が違う」と言う方もいらっしゃるので注意しましょう。
大事なのはフレーズの切れ目
「レベル別 ネイティブ・スピード攻略法 初級編」でも話しましたが、リスニングにおいてはフレーズの切れ目を理解することがとても重要です。その点、フランス語の先生は分かりやすいように意味の切れ目で一呼吸おきながらゆっくり話してくれます。例えば次のような感じです。
Je suis allé(e) au cinéma / avec mon ami(e) / et on a regardé “ABC”. / Il était très intéressant.
一方、一般的なフランス人同士の会話なら、以下のフレーズを一気に話してしまいます。
J’ai été au ciné avec un ami, on a vu “ABC”. Il était pas mal, j’ai bien aimé.
フランス語の先生のように一呼吸おいて話してもらえると、フランス語初級・中級者としては意味のまとまりを理解しながら会話を追っていくことができます。しかし人の脳は一つでもわからないことがあると、その情報を理解することに集中してしまい、その後「聞く」という行為に注意を向けることが難しくなります。こうして前のフレーズの意味を理解しようとしている間に「話し相手はもう別のことを話している」という状況が生まれてしまうのですね。
まとめ
フランス語の先生の話が分かりやすいのはシンプルな言い回しを使って、意味のまとまりで一呼吸おいて話してくれるから。シンプルな言い回しと日常会話的な言い回しを使い分けたり、途切れない会話の意味を同時進行で理解できるスキルは、実は上級者のレベルです。「もしかして自分のレベルは思っているより低いのかも」という心配は無用ですよ。
執筆:マナミ