”香り”というと、どのような花を思い浮かべるでしょうか。薔薇、ジャスミン、それともラベンダー・・・。今日はそうした代表的な香りの一つ、スミレの花香るトゥルーズ(Toulouse)の街を旅しましょう。そして、素敵なスミレの香水についてご紹介します。
トゥルーズ発祥のスミレグッズ
フランス南西部に位置するラングドック地方にあるこの街は、2月になるとスミレ色に染まります。鉢植えやブーケなどスミレに纏わるものが広場に集まり、遠くない春を感じさせます。
今ではフランス各地のお菓子屋さんで見かける、スミレの花をそのまま結晶化させたキャンディーも、もともとは19世紀末にここトゥルーズで生まれたものです。小さく美しいこのスミレのブーケは毎年600,000本以上も生産され、フランス全土はもとよりヨーロッパ中に広く輸出されています。
愛され続ける貴重なスミレの香水とは?
数ある品種のうち香水に使われるのはニオイスミレ(viola odorata)です。貴重な香料で、たった30グラムを得るために1トンものスミレを必要とします。
葉、茎から抽出される自然香料は青々とし潤いを感じます。花からの抽出はコスト高と大変な手間がかかるため、現在では行われていません。しかし、調香師達はイオノン(ionone)という合成香料などを組み合わせながら、素晴らしい香りを再現しています。
花そのものの香りは、鼻先がそのおしろいに似た甘さを感じ取ったかと思うとすぐに消えてしまいます。しかし、そのはかない香りはとても愛おしく、古くから女性達はこの花の香水を身につけてきました。
スミレ香水の本家 ベルドゥー
1902年、ベルドゥー家(Berdoues)によりトゥルーズに香水店が誕生しました。創立者の一人、ギヨーム ベルドゥー(Guillaume Berdoues)の息子のアンリ(Henri)が調香師となり、1936年にメゾンの代表的作品となるオードトワレ、「ロリジナル ヴィオレット ドゥ トゥールーズ(L’Originale Violette de Toulouse)」を生みだしました。
詳細はこちら⇒ベルドゥーの公式サイト
ヴィオレットドゥトゥールーズの香りの特徴
スミレ特有の控えめな甘みにみずみずしいラズベリーやヘリオトロープが加わり、パウダリーでありながら美味しい香り立ち。ラストノートにはムスクとトンカ豆が温かく包み込みます。クラシックな香水ですが、キャンディーを思わせる弾けるような愛らしさがとても素敵です。
まとめ
まだ厳しい寒さのなか、店先でスミレの花のブーケを見かけると心がときめきます。春を迎える喜びに似た香り。今日はそんな花咲くトゥルーズの街をご紹介しました。次回はフランス東部へ香りの旅に出かけましょう。
執筆者 ふみ