Nice とMonaco の間にあるÈzeという小さな集落の観葉植物
前回から、フランス語が全然話せないまま渡仏してしまった僕が、一体どのようにしてフランス語を習得していったのかを、皆さんだけにこっそりお伝えしています。
映画のセリフを書き取ろう
さて、紙とペンを用意して僕が始めたのは、ディクテ(la dictée :聞き取り)です。
長くないシーンを選ぶ
まず比較的わかりやすく、それほど長くないシーンを選びます。そしてそこをひたすらエンドレスで聞き続けます。「それほど長くないシーン」というのがポイントです。なぜなら、あまり長くなってしまうと、途中からディクテを忘れて映画に見入ってしまうのです。
最初のうちは自分へのハードルの設定が高すぎて、気がつけば何度も映画を最後まで見てしまっていました。それはそれで充分役には立っているのですが、選んだシーンが映画の序盤であるほど長時間を割いてしまいます。皆さんがもし挑戦される場合は、ここに注意してくださいね。
工程は以下の4つ
1、そのシーンを集中して聞く。
2、カタカナで聞こえた通りに書き出していく。
3、聞き取れなかったところを何度も聞いて、カタカナを完成させていく
4、カタカナが完成したら、聞きながらフランス語に直していく
カタカナで書き出す
なぜカタカナなのか。それはただ単に、いきなりフランス語で書き出していく語学力がなかったからです。しかし後になって気がつくのですが、このカタカナで書き出していく方法が僕にはぴったり合っていたのです。聞き取れなかった単語に執着することなく、聞こえてきた音を次々と書き出していくことができたからです。
「完璧」を目指さない
ここで重要なのは、すべての単語がわかることではなく「聞き取る能力を育てる」ことです。
日本人は良くも悪くも非常に真面目で、完璧を目指します。そして、あまり「見捨てる」ことができません。会話でもよくあるのですが、日本人は完璧にしゃべろうとしてしまい、まず頭の中で文章を組立ててからしゃべろうとします。
観葉植物になっちゃう
そうこうしているうちに会話はどんどん先に進んで行ってしまって、気がついたらなんの会話をしていたのかわからず、取り残されてしまうことがあります。一対一で話しているときはまだ相手が待ってくれるのですが、大勢の中での会話となると、本当に日本人は会話についていけません。
そうです。いつも僕がパーティでなっていた、あの観葉植物化です。
Èzeの小路
僕は本当にしょっちゅう観葉植物になっていたので(大勢の中にいるのが苦手という性格もあるのですが)、フェット(une fête パーティ)はとても気が重く、楽しい場に行くはずなのに、清水の舞台から飛び降りるような覚悟が必要だったものです。
次へ次へと進んでいく
分からない箇所は見捨てて次に進む。分からなければもう一度やり直す。その作業の中で、次第に耳と頭に「次に次に聞こうとする力」をつけていこうと思い立ったのです。
もちろん、わかる単語は最初からどんどんフランス語で書いていけばいいのです。できるなら、聞こえた通りにアルファベットで書いてみるのもいいでしょう。
音楽をしている方ならわかるかも知れませんが、「聴音」をするような感じです。一つの音にこだわらずに、ポイントを押さえてどんどん次を聞いていく。
消しゴムは使わない
聞き取りをしている間は決して消しゴムを使わない。これはディクテの鉄則です。聞いている間に消しゴムを使うと、その先のことを絶対に聞けなくなってしまうからです。「あ!ここ間違って聞いてた!」と気づいたときは、二重線でさっと消してすぐ上や下などに正しいものを書き込んでいく。消しゴムを使う癖をつけないことが大切です。
ディクテを何度も何度も繰り返してほぼ完成したら、今度は辞書の用意です。ここから先はまた、続編でお話しましょう。
執筆 Daisuke