堅いお話が続いたので、今回から「フランスこんな小話」をはさんで連載の箸休めにしようと思います。第1回目のお題は「やだ、H…♡ Wooooow♡」
これからフランスの魅惑のエロティック(érotique 官能的な・淫らな)な世界へご案内…というのは嘘です。期待をされた方、誠に申し訳ありません。今回お話しするのは、「あなたのそのフランス語の発音、もしかするととんでもなくセクシーなこと言ってるかも?」ということです。
フランス語学習で最も苦労する「発音」
皆さんがフランス語を学習するうえで、一番苦労するのは何ですか? 名詞の性ですか?動詞の活用ですか?それともリエゾンする・しない(*1)、ですか? *1:une liaison 連音。単独では発音しない語末の子音を次の単語の頭の母音とつなげで発音すること
フランス語学習の上で、日本人が最も苦労するものの一つがプロノンスィアスィオン(une prononciation 発音)です。記事では頻繁にフランス語のカタカナ表記をしていますが、そのまま読んでもフランス語の発音にはなりません。日本語にない音がたくさんあるうえに、日本語ではどうしても表記できない音が多いです。
適当に発音していると…
どれだけ正しい発音に挑戦しても「違う」と言われ、人によっては発音が少しずつ違うし、教え方も違う。「一体どうすればいいの?」と逃げ出したくなる人も多いと思います。
しかし絶対にあきらめないでください。なぜならば、今ここであきらめて適当に発音していると、全然通じないどころか相手にとんでもない誤解を与えてしまう怖れがあるからです。
その驚愕の例を紹介しましょう!
J’ai mal au cou.
J’ai mal au cou. (私は首が痛い)
上の文章を音読してみてください。もし近くにフランス人がいれば聞いてもらいましょう。あなたの発音が正しければ「どうしたの、寝違えたの?」と心配してくれることでしょう。
しかし、もし彼らがクスッと笑い「なになに?いったい昨日なにをしたの?」とちょっと意地悪に聞いてくるようなら、あなたはきっと「J’ai mal au cul(私はケツの穴が痛い)」と発音しています!!
「おしりの穴」は「le trou du cul」ですが、「le cul」だけで「ケツの穴」という少し乱暴な意味合いで非常に頻繁に使います。
…どちらにしてもお大事になさってください。
「cou」と「cul」
カタカナで表記すると「ジェ マル オ ク」と「ジェ マル オ キュ」なので「そんなの間違えないよ!」と思われるかも知れません。
日本語の「ク」という発音はフランス語の「que 」に近い音で、日本人が「cou」もしくは「coup」と発音しようとすると、自分の想像以上に「ou」を大げさに言わなければなりません。
そして厄介なことに…日本人が一生懸命唇を尖らせて「cou」と言えば言おうとするほど、なぜか発音はどんどん「cul」に近づいていくという悲劇…。「首」と言いたいだけなのに…。
「Merci beaucoup」も気をつけて
同じ「ク」の発音で日本人(特に留学したての若い女性)が陥りやすい発音ミスは
Merci beau cul ! (ありがとう、きれいなケツの穴!
Merci bon cul ! (ありがとう、おいしいケツの穴!)
なんてことでしょうか…!!!!! いったい日本人はどれだけおしりが好きなんでしょうか…。
頻繁に使う言葉だからこそ発音に注意が向かないのですが、本当に大勢の日本人が街なかで大きな声で、満面の笑みで「ありがとう、きれいなケツの穴」と言っているのです。しかもとても礼儀正しく。
たくさん練習して正しい発音を!
さ、皆さんも「おいしいおしり」になってしまわないように、beaucoup beaucoup(たくさんたくさん)練習して、正しい発音を身につけましょう。
執筆 Daisuke